「手根管症候群」の初期症状はご存じですか? 原因や手術の流れも医師が解説!
手首の神経に圧迫がかかり、日常生活に支障をきたす「手根管症候群」。一体、どのような治療法があるのでしょうか。今回は、手根管症候群の手術や術後のリハビリについて、「くらげ整形外科」の山﨑先生に解説していただきました。 【イラスト解説】老化が進むと起こる“体の変化” [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
手根管症候群の症状・原因
編集部: まず、手根管症候群について教えてください。 山﨑先生: 手根管症候群は、手首の「手根管」を通過する神経が、なんらかのきっかけで圧迫される疾患です。手根管は手首の内側にあり、主に指の感覚と動きを司る正中神経が通っています。 編集部: なぜ、神経が圧迫されるのですか? 山﨑先生: 原因はいくつかあります。その中でも、妊娠や出産、更年期などで女性ホルモンのバランスが崩れたり、指や手首の過剰な使用や圧迫、炎症などによって手根管の組織が腫れたり、圧力がかかったりすることで発症するケースが多いですね。仕事や家事で手首をよく使う人がなりやすいのはそのためです。また、過去に手首の骨折をした人や、人工透析を受けている人にもよくみられます。 編集部: どのような症状が出るのでしょうか? 山﨑先生: 感覚障害として、親指、人差し指、中指、薬指の半分(親指側)にしびれや痛みが出るほか、手首から腕にかけても重だるさや痛みが起こることがあります。進行すると、手にうまく力が入らず、ものが握りにくくなるような症状も出ます。いずれも、症状が夜間や明け方に悪化することが知られています。
手根管症候群の治療法
編集部: 手根管症候群の治療は、どのようにおこなわれるのですか? 山﨑先生: 炎症や症状を緩和する飲み薬や湿布薬、手首への夜間を中心とした装具療法、温熱療法、手首へのステロイド剤の注射などがあります。なお、これらの治療は全て、症状の緩和や進行予防を主な目的としたものです。 編集部: 手根管症候群は治るのでしょうか? 山﨑先生: 軽症、もしくは明らかに一時的な原因によるケースは、上述の治療で治ることもあります。その一方、ある程度症状が重症な場合は手術が選択されます。また、治療開始が遅れてしまうと、手術をしたとしても症状が完全になくならないこともあります。しびれだけでなく、つまみにくさなど動きに障害が出ているケースなどは、注意が必要ですね。 編集部: 手根管症候群の手術について、もう少し詳しく教えてください。 山﨑先生: 「切る」手術と「切らない」手術があり、手根管の天井部分にある横手根靭帯を切開し、手根管を開放して正中神経の圧迫を解消する手術が一般的です。以前は皮膚を切開しなければなりませんでしたが、今は内視鏡を使ってできるので傷は1.5cm程度ととても小さくて済みます。なお、手術は局所麻酔を用いて、日帰りで可能です。 編集部: しびれはすぐに解消されるのですか? 山﨑先生: いいえ。術後に神経の圧迫が解除され、指先に向けて神経の回復が始まるので、手術の直後にしびれが消失することは稀です。回復のペースは、手術前の重症度に大きく左右されるため、個人差が大きい印象です。目安として、指先までしびれの症状が改善するには、3~12カ月を要します。