「毎日午後は探究」って実際何をするの?「シブヤ未来科」という渋谷区公立中の授業をのぞいてみた
◆探究学習は「学びの主導権を子どもに返す」チャンス
EdTechプログラム「インスパイア・ハイ」は、Inspire Highが掲げる「世界中の10代をインスパイアする」というミッションにもとづいて作られたもの。もともとはガイドとリアルタイムでつながる、個人向けの生配信オンラインプログラムでした。ただ、この形式だと「参加してくれるのは、すでにインスパイアされている意識の高い子たち。そうではない子、悶々としている子に好奇心や主体性の種を届け、一歩踏み出すきっかけをつくりたかった」と杉浦さんは振り返ります。 コロナ禍による学びのオンライン化やGIGAスクール構想によるデジタル環境の整備、高校での探究の必修化などのタイミングが重なったこともあり、学校向けのプログラムを開発・提供したところ、大きな反響があったと言います。 「多くの人にとって勉強は、自分の意思とは無関係に、しなくてはならないからするものになっています。しかし本来は、知的好奇心やあんなふうになりたいというロールモデルへの憧れがあってこそ、学びへの欲求は駆動するものです。また、AIの技術革新に代表されるような変化が激しく先が見えない今の世の中においては、大人が子どもに知識や技能を教えるという行為自体に意味がなくなってきています。学びの主導権を子どもに返す。その転換が、今、探究学習という形で始まろうとしているのではないかと感じています」(杉浦さん) 杉浦さんたちの思いは、渋谷区が目指すシブヤ未来科の在り方と一致。さらに、学校や教員だけで全てを担おうとせず、外部と積極的に連携・協力する、という渋谷区のスタンスとも合致しました。 「インスパイア・ハイが、Howを教えるのではなくWhyをつくるプロダクトであるところに共感してもらえたのだと理解しています。現場の先生方や生徒たちの意見を取り入れながら、よりよい学びの素材を提供するのが私たちの役割。そして、その素材をどう料理するかは、教育のプロである先生方の腕の見せどころだと思っています。私自身、現場の先生方の熱い思いに触れるたびに感化されています。これからも先生方と一緒に、生徒たちをインスパイアしていきたいです」(杉浦さん) この記事の執筆者:笹原 風花 ライター・編集者。奈良県出身、東京在住。第2の故郷はオランダ・ライデン。高校生向けの大学受験情報誌の編集部に4年間勤めたのち、制作会社勤務を経て2014年に独立。取材・執筆分野は教育や学びを中心に多岐にわたり、企業の社内報や広告制作などにも携わる。
笹原 風花