「毎日午後は探究」って実際何をするの?「シブヤ未来科」という渋谷区公立中の授業をのぞいてみた
◆教室を、自分の考えを掘り下げ、人の目を気にせずアウトプットできる場に
K-POPダンストレーナーのチョ・セロムさんによるガイドトークを視聴した後のアウトプットの時間には、番組のファシリテーターにより提示された「あなたが考える理想のチームとは?」という問いについて、生徒それぞれが掘り下げ、理由や自らの経験を添えて表現していきます。 使うのは、一人一台ずつ持っているタブレット型パソコン。「なんでも言い合えるチーム」「相手のことを思いやるチーム」「全員で頑張れるチーム」「一人ひとりが輝けるチーム」など生徒は自分の考えを打ち込んでいきます。 続くフィードバックの時間には、同じセッション(セロムさんがガイドを務めるセッション)に取り組んだ他校の生徒のアウトプットに対して、自分の感想や意見などを書き込みます。教室は静かで、カタカタとキーボードを打つ音が響きます。 いわゆるディスカッション形式ではないのは、「周囲の目を気にせず、自分と向き合う時間にしてほしいから」とInspire High創業者・代表の杉浦太一さんは言います。 「セッションでは、ガイドを通したインプット以上に、生徒の主体性を引き出すことを重視しています。10代は周囲の友達にどう見られるかが気になる時期。こんなことを書いたらどう思われるかなという不安を感じることなく表現できるよう、セッションには匿名で参加し、同じ学校の生徒同士はアウトプットを見られない(フィードバックができない)ようにしています。 ディスカッション形式だと人前で意見を言うのが苦手な生徒にとってはハードルが高くなりますし、誰かの発言に反射的にリアクションをするのではなく、一度、自分の中でじっくりと考える時間を持つことも大事だと考えています」(杉浦さん)
◆学校生活では出会えない世界や多様な価値観から、未来を生きるヒントを得る
古谷先生がインスパイア・ハイのセッションを授業で使うのは、今回で二度目。これから自らの進路を探究する時期を迎える9年生にとって、セッションは「さまざまな世界を知り、視野を広げるうえでも有効」と言います。 「私たち教師が生徒に見せられる世界や選択肢には限界があります。セッションを通して、普段の生活では会えない人たちと出会い、多様な価値観や生き方、職業などに触れ、自分の中で深める機会を持つことは、生徒たちがどう生きるかのヒントを得ることにつながるはず。こうしたコンテンツを活用しながら、生徒の意欲や意志を触発できたらと考えています」(古谷先生) また、授業を受けていた9年生のAさん、Bさんは、次のように話します。 「私自身も含めて、将来の夢や職業が決まっていない子が多いので、セッションを通して自分が知らなかった世界や考え方を知ると、将来を考えるヒントになると感じています。私は人を支える仕事に興味があるので、これからの探究を通して自分がやりたいことを掘り下げていきたいです」(Aさん) 「僕は他の人の考えや自分とは違う意見を聞くのが好きなので、セッションのガイドトークで新しい視点を知ったり、他の生徒のアウトプットを見て自分の考えを深めたりできるのは面白いです。シブヤ未来科では、自分で考える力や幅広い視点が身につくので、今後の人生にも役立つんじゃないかと感じています」(Bさん)