大谷翔平はアジア人だから「ストライク判定」が不利になる? SNSでささやかれる説の真偽
---------- 「アジア人だから、審判のストライク判定が厳しい……」。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手について、こんなウワサがまことしやかにささやかれている。これは本当なのだろうか? 新刊『行動経済学が勝敗を支配する』を上梓した今泉拓氏が、行動経済学の理論のひとつである「内集団バイアス」の視点から解説する。 ---------- 【写真】大谷翔平が「豪邸報道」に猛激怒していた…!日テレとフジが「出禁」に…
「内集団バイアス」と人種差別の関係
大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は、2度のMVPになるなど世界を代表する野球選手です。当然、メディアからの注目も大きく、1打席1打席がビッグニュースとして報道されます。 そのなかで、まことしやかにささやかれているのが「大谷翔平はアジア人であるためストライクゾーンで不利」である、という説です。特にアメリカ人の審判から疑惑のストライク判定をされた際、この説がSNSで喧伝されることがあります。 はじめに伝えておきたいのですが、この説は証明されていません。メジャー評論家のKyle Kishimoto氏の分析では、誤審が多い選手ランキングで大谷はメジャー38位であり、他のアジア選手では似たような傾向はありません。 データ会社Codify Baseballの分析では、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)のような大柄な強打者も判定が不利になることが知られており、人種の影響というよりは、体格と実力の影響と考えるほうが適切です。超一流であるメジャーの審判は、アジア人だからといって不利な判定をしているわけではなさそうです。 この説がとなえられる背景として、人種による「内集団バイアス」が挙げられるでしょう。内集団バイアスというのは、自分と同じ属性の人(出身地域・学歴等)の人を優遇してしまう認知バイアスのことです。 身内贔屓と似たように使われることもありますが、内集団バイアスでは相手と直接知り合いでない場合やそれによって利益を得ることがない場合でも、内集団を優遇することが知られています。 人種の違いによる内集団バイアスは、人種差別につながる(例:白人の人事担当が白人の学生を採用しやすい)として、人種差別問題解決のために避けるべき認知バイアスだとされています。