基調的物価上がっていく中、緩和度合い縮小も考える必要-植田氏
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は9日、今後の金融政策運営に関し、基調的物価が予想通りに上昇していけば金融緩和の度合いの縮小が必要になるとの見解を示した。参院財政金融委員会で答弁した。
植田総裁は、日銀の見通し通りに推移すれば「基調的な物価上昇率が少しずつ上がっていく中で、緩和の度合いの縮小も考えていかないといけない」と説明した。賃金と物価の好循環がこれまで以上に「どんどん強まっていく場合には、緩和縮小のペースを速める可能性もある」とも述べた。
日銀の物価見通しが「大幅に下振れるリスクはだいぶ低くなってきた」としつつ、本当に実現するかは「今後のデータ次第であり、チェックをし続ける」として毎回の金融政策決定会合で丁寧に点検していく考えを示した。現時点では「先行きどういうタイミングでどういうふうに短期金利を動かしていくかについて予断を持っていない」と語った。
一方で、消費者物価は2%を超えて推移しているものの、基調的な物価上昇率は「まだ2%を少し下回っている」と指摘した。物価の基調や日本経済をサポートしていくためには「緩和的な金融環境を維持していくということが大切だ」と改めて表明。物価の基調が失速するような局面では、「緩和を縮小するペースを弱める、縮小をしないという判断になる」と述べた。
日銀は3月会合で世界で最後のマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げを決めた。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入も停止し、10年以上にわたる大規模緩和に終止符を打った。市場の関心が今後の追加利上げの時期とペースに移る中、賃金を反映しやすいサービス価格や中長期のインフレ期待など基調的物価の動向への注目が一段と高まりそうだ。
日銀の金融政策が円安要因になっているとの指摘に対しては、「一般論としては、金融政策は為替レートを決めるファンダメンタルズの一つ」と説明。為替レートの動きが場合によっては経済・物価情勢に無視できない影響を与えることもあり得るとし、「そういう事態に至ったら、それは金融政策の対応をもちろん考える可能性が出てくる」と語った。