「モルック」体験会など参加型企画も―日本リウマチ学会、山形市で市民公開講座開催
◇患者が治療で取り戻した笑顔が原動力に
私が整形外科医を志すきっかけは、痛みで体が動きにくくなった患者さんが治療で笑顔を取り戻して社会に復帰する姿を、学生時代を含めて目の当たりにしてきたことでした。一方で、医師免許を取った1986年ごろはリウマチの治療がうまくいかず、地方の大学病院の整形外科病床には、関節リウマチを長期間患って動けなくなった患者さんが非常に多く入院していました。整形外科医の視点からリウマチ性疾患に苦しむ患者さんやご家族の役に立ちたいと思い立ったことが、リウマチ学を志すきっかけになりました。 リウマチの患者さんの診療を始めた当初は、いくつかあった薬も効果の実感は乏しく、外来で患者さんと言葉もなく悩む、といった時代でした。それから10年ほどしてメトトレキサートという薬が使えるようになり、治療に期待ができるようになりました。さらに2000年代に入ってからは生物学的製剤、10年ほど前にはJAK阻害薬が使えるようになり、薬剤療法が目を見張るほど大きく変わっていく時代を、身をもって経験してきました。 大学院生時代にフィンランドに留学の機会を得たことも大きなきっかけです。当時フィンランドは世界で初めてリウマチ患者専用の病院をつくり、患者さんを支える社会体制も整備されていました。その国で整形外科とリウマチ科両方の教授に師事することができ、研究を通して世界中の方々と知己を得る機会に恵まれたことは大きな財産になっています。 炎症を扱うので、リウマチ学は学問的にも非常に面白い分野だと思います。もう1つ大切なのは、リウマチ学に関わる領域は非常に裾野が広く、内科、整形外科だけでなく小児科やリビリテーションなど、医学分野はもとより社会医学も含めて学際的に多くの分野の方々が関わっているということです。小児でリウマチ性疾患を発症する方もいますし、高齢の患者さんではリハビリテーションを担当する理学療法士や作業療法士、看護師、介護士の方などいろいろな方との連携が大切になってきます。リウマチ学を志す若い人たちには、リウマチ学は学際分野であることを念頭に、自分の得意な分野を中心に幅広く学んでほしいと願っています。それはおそらく、社会を勉強することにもなるでしょうし、患者さん一人ひとりと深く向き合うことにもつながり、若い先生の医師としての裾野が広がると思います。ともすれば、整形外科医は手術だけやっていればよいと考える若手も増えていますが、患者さんとしっかり向き合うという、医師としての基本姿勢を学ぶことができるのもリウマチ学の魅力ではないでしょうか。 現在、個人として目指していることは、専門分野にとらわれず、リウマチ性疾患に興味を持って診療や研究にあたってくれる若手を増やすことです。特に東北地方はリウマチ診療に携わる医師が少なく、底上げを図っていければと念じています。
◇「来て楽しかった」と思える市民公開講座に
先に少し触れたモルックという競技は、数字が書かれた木のピンを倒すというゲームで、関節に障害がある方も楽しめます。最近、バラエティー番組などで取り上げられて日本での知名度も上がりつつあるようで、8月には北海道函館市で世界大会も開かれます。現実的で、ときには深刻な話を聞くだけではなく「来て楽しかった」と思えることが大切と思います。モルック体験会などで体を動かして楽しむ機会も用意していますので、多くの方が市民公開講座にご参加いただけるよう期待しています。
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