「九十九島せんぺい」を前に商品への思いを語る前田慶史さん

　長崎県佐世保市で菓子店として1948年に創業した「九十九島グループ」（同市日宇町）が、51年に発売した「九十九島せんぺい」。縁起物のカメの甲羅を模した六角形の和菓子は地元で親しまれている。9月、歴史ある銘菓から新たに焼き菓子の「九十九島せんぺいフィナンシェ」が生まれた。社内の開発プロジェクトに関わった長崎営業部部長の前田慶史さん（46）に、商品に込める思いや、今後の販売戦略などを聞いた。　（聞き手は重川英介） 【写真】「九十九島せんぺい」と「九十九島せんぺいフィナンシェ」 　－日本記念日協会が「九十九島せんぺいの日」と認定する9月19日に新商品を発売した。反響は。 　せんぺいができて74年目にして初の姉妹品。製法は途中まで同じで、せんぺいを粉末状にくだいたものをフィナンシェの生地に混ぜて焼き上げる。パリッとしたせんぺいの食感に親しんでいる方からは、風味はそのままなのに、しっとりやわらかな食感がこれまでと違って楽しいね、と言ってもらっている。 　－いつ頃から新商品を考えていたのか。 　20年以上前から、せんぺいから派生したものを作ろうと試行錯誤を重ねてきた。ただ、地元で愛されてきたせんぺいの存在が大きく、これに見合う、超えるものがなかなか生まれなかったのが正直なところだ。 　－どんな試行錯誤をしたのか。 　従来のせんぺいにチョコレートをかけたり、材料にコーヒーやココアを入れたり…本当にたくさん試してきた。昨年夏に社内の販売、企画、開発、生産など各部門の若手でプロジェクトを発足させ、私はオブザーバーとして関わった。長い議論や検証を踏まえて、せんぺいのエッセンスをそのまま入れるというやり方にたどり着いた。 　－若い人にとってフィナンシェはなじみがある。 　そう考えている。ただ、せんぺいがあって、フィナンシェがある。中心になってほしいのは、せんぺい。販売エリアを広げていく時にフィナンシェが、せんぺいの良さを認識してもらう入り口になればと願う。今後、新たに派生する商品も含めて「九十九島せんぺいブランド」として展開したい。 　－今後の販売戦略は。 　せんぺいの販売エリアは長崎、福岡両県の北部九州。フィナンシェの誕生を機に九州全体に広げ、九州を代表するお土産にしたい。首都圏を中心に全国で認識してもらえるようにしていきたい。 　まえだ・けいし　宮崎市出身。大学卒業後に入社し、大阪や福岡での商品開発事業などを経て昨春から現職。佐世保市に暮らし始め、仏事のお供えや日頃のおやつにせんぺいが用いられる日常を知り「どれほど愛されているかを知った」と話す。