シタデル従業員、自社ファンド持ち分が4年で3倍-1兆3500億円に
これに対し、従業員の繰り延べ報酬からの利益は通常、ロックアップ期間が満了するまで投資されたままになる。これは過去4年において大きな利点だった。
投資家の中には資金返還を歓迎した人もいるだろうが、シタデルの主力ファンドに資金を残しておくことを望む人もいたかもしれない。
「非常に好成績のファンドから資本が返還された場合、その資金の新たな受け入れ先を見つけなければならない」と、ヘッジファンドや投資家に助言するコンサルティング会社、ウィザースプーン・パートナーズのマネジングメンバー、キース・ダンコ氏は指摘。「同じくらい高いリターンを期待できる受け入れ先を見つけるのは難しいかもしれない」と続けた。
繰り延べ報酬に加え、シタデルには、報酬が一定の水準に達した時点で幹部が自発的に投資できるファンドがある。毎年5月に提出される書類によると、「CEIF」と「CEIFパートナーズ」という2つのファンドの資産は過去5年間で2倍以上に増加し、約50億ドルに達している。シタデルの従業員は、投資した資金に対して、外部の顧客と同等の手数料を支払っている。
グリフィン氏(56)は、ウェリントンの最大の単独投資家だ。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、同氏の資産418億ドルのほぼ半分は、同社の資金運用部門であるシタデル・アドバイザーズとそのファンドに投資されている。
シタデル運用資産全体で従業員の資金が占める割合は、21年末時点の21%から今年6月末時点では29%に上昇した。
自社ファンドに投資されている繰り延べ報酬の増加により、ライバル企業がシタデルのトレーダーやポートフォリオマネジャーを引き抜くことはより困難に、少なくともよりコスト高になる。ヘッジファンド業界では、雇用主は通常、採用者が以前の職場を退職する際に失う繰り延べ報酬を全額補償しなければならないからだ。
人材引き抜きは「より難しく複雑になり、費用もかさむようになるが、優秀な人材を確保するためならば他の運用会社は引き抜きをかけるだろう」とプライベートエクイティーおよびヘッジファンド業界の人材紹介会社であるロング・リッジ・パートナーズのパートナー、ジェイソン・シュルマン氏は述べた。「とはいえ、人々が転職したいと思うには高額な報酬という以上の本質的な理由が必要だろう」と付け加えた。