剣が峰の衆院選、与党過半割れで円安・株安リスク-政局は日銀も縛る
とはいえ、大方の市場関係者が想定していた、比較的安定した自公政権の継続という大前提が揺らぎつつあることで、市場はざわつき始めている。
9月に1ドル=139円台まで上昇していた円相場は今週、153円台と7月以来の水準に下落。米国の利下げ期待の後退が主因だが、円はドル以外の主要通貨に対しても弱含んでおり、日本の総選挙に対する警戒感の高まりがうかがえる。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、株式市場は連立与党の過半数割れを織り込みつつあるとした上で、過去の例では自民党が単独で圧勝した場合に選挙後1-3カ月間株価が上昇するが、それ以外は下落か良くて若干の上昇だったと指摘。今回は後者のパターンが当てはまりそうだと予想する。
財政拡張
セクター別では、石破政権による防衛費増額期待の追い風を受けていた防衛関連銘柄に売り圧力が強まる可能性があると、大和証券投資情報部の高取千誉上席課長代理は指摘する。一方、来年の参院選に向けて「国民受けのいい最低賃金引き上げや物価対策などの政策を打ち出す可能性が強まると消費にはプラスとなり、消費関連銘柄は買われる可能性も出てくる」とみる。
拡張的な財政政策は債券相場にとって重しとなる。既に市場では財政リスクを反映しやすい超長期債への売り圧力が強まっており、30年国債と10年国債の利回り格差は120ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上と、過去25年間の最高水準に向け拡大している。与党過半数割れは日本市場のボラティリティーを高め、株安・円安・債券安のトリプル安を招く可能性もある。
--取材協力:山中英典.
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Hideyuki Sano, Mia Glass