店長クラスで年収700万円「カナダのラーメン店」で日本人が働くには?
ワーホリで1年間過ごした後、アメリカ・シカゴの店舗で働く誘いも受けたが、日本に帰国することを選んだ。 だが、日本に戻ると、カナダでの生活が恋しくなった。大阪の居酒屋などで2年間バイトとして働いたが、日本での生活におもしろみが感じられなくなっていた。 「日本にいたら、ルーティン通り、ずっと同じような生活をしていると思いました」 カナダで生活をしているときは、バスや電車が時間通りに来ないことにストレスを感じることもあったが、そんなイレギュラーなことも、あったほうがおもしろいなぁと思いはじめた。 2021年秋、カナダに戻り、KINTONラーメンの運営会社の社員として働くことになった。英語でのコミュニケーションには苦戦したが、カナダの人々の距離感の近さは気に入っていたこともある。 「たとえば、街中でつまずいたときに、カナダの人は笑ってくれたり、『大丈夫か』と声をかけたりしてくれる。オープンというか、声をかける壁が低いですよね。日本だったらみんな下向いてスマホをいじって歩いているようなところがありますけど、そんなところがカナダは過ごしやすいと感じますね」
今後はKINTONラーメンで働きながら、永住権を取得することを考えている。永住権が取れれば、「日本で暮らすよりも将来の選択肢が広がる」からだ。ただ、当局の審査を突破するには、高い英語力を身につけたり、カナダでの就労経験を積んだりすることが必要になる。そのレベルは高く、高卒の学歴も大きなハンディキャップになるという。合格できる確信はまだない。2~3年はかかることを覚悟している。 「30歳ぐらいで取れたらいいが、実際は厳しいかもしれない」 ● 日本食飲食店で働きながら 英語力を上げる若者たち 2009年に創業したKINTONラーメンの運営会社KINKA FAMILY(キンカファミリー)は、カナダ、アメリカを中心に、日本食店を幅広く手がけており、寿司店や居酒屋、焼き鳥店、カフェも展開する。特にラーメン店は出店攻勢を強めている。副社長の高根大樹さん(44歳)は「かつて日本食のイメージは、寿司、天ぷらといった高級料理のイメージが強かったですが、ラーメンのようなカジュアルな食事が広がりはじめています」と語る。 一方で、日本食店の日本人がカナダに渡るための足がかりとしての役割も果たしてきた。カナダで仕事を探す日本人にとっては、飲食店は特別なスキルがなくても働きやすい職場の一つだ。ワーホリなどで訪れた若者がアルバイトとして働くケースも多いほか、会社からジョブオファーを出してもらい、就労ビザで働く場合もある。就労ビザを受ければ2年間は働けるため、この間に英語力などを上げて、永住権取得に向けた「ポイント」をためるスタッフも多いという。これまでに50人ほどにオファーを出して雇ってきたという。 働き手の年収は店長クラスで年収700万円程度になるため、日本で働いていたときよりも年収が高くなる人も多い。