店長クラスで年収700万円「カナダのラーメン店」で日本人が働くには?
KINTONラーメンは2012年にトロントに1号店を出し、カナダやアメリカなどで20店以上を展開する。日本人の客はほとんどおらず、ラーメンの味付けは日本とも少し異なる。人気メニュー「ポークスパイシーガーリック」は、豚骨スープに独特の辛みが加わっており、カナダ人らに好まれている。現地では、ラーメンが1杯2000円を超えることもあるなか、1600円から食べられるのも人気を集める理由だ。「自分好みのラーメンを食べたい」というカナダ人のニーズに応えるため、チャーシューやメンマといったおなじみの具材のほか、油揚げやキクラゲなどのトッピングが充実しているのも特徴だ。 客層は幅広い。日中はビジネスマンらが訪れる一方、メジャー・リーグのトロント・ブルージェイズの本拠地が近くにあるため、観戦客らが試合の前後に訪れる。日本ではラーメン店というと1杯食べて足早に店を去るケースが多いが、大人数で誕生日パーティーを開くような客もいる。食後もゆっくりと談笑しながら過ごす客も珍しくない。現地では「ラーメンレストラン」という感覚で受け入れられ、そのぶん質の高いサービスが求められるという。チップを支払う文化からサービスに対する評価が自ずとわかることになる。 「数字として見えるので、プレッシャーにもなりますね」
● キャリアの限界を感じ 新天地へと向かう 森井さんは高校卒業後、地元の愛媛県の製紙工場で働いた。工場は3交代制で、4人1班でラインを回した。班はリーダー役のベテラン社員、中堅2人と若手1人でつくられる。先輩社員と日々一緒に働くなかで、キャリアの限界がなんとなく想像できてしまった。自分の将来に希望を感じられず、退職を決めた。 現状を変えようと選んだのが、ワーホリだった。知人に勧められるがままに、2018年にカナダに渡航した。 だが、海外渡航ははじめて。英語力は「『OK』や『YES』、『NO』が言えるくらい」だった。「行ったらどうにかなるやろ」と考えていたが、カナダの空港に到着すると、英語が思うように通じず、不安が広がった。 語学学校に通うなかで、生活費として収入が必要となり、アルバイトとして働きはじめたのがたまたま昼食で訪れたKINTONラーメンだった。「日本食の店なら働きやすいだろう」と考えていたが、甘くはなかった。客の注文も思うように聞き取れず、カナダ人のスタッフらとの会話ももちろん英語。不慣れな英語での会話にストレスや疲れがたまり、「日本に帰りたい」と思うこともあった。 「カナダでは客としてお店でオーダーするときにも緊張しちゃって、日本の居酒屋で注文するような感覚ではまだできませんね」