廃部寸前だった本庄第一高校卓球部が“普通の講習会”を開催し、出られなかったはずの団体戦で優勝するまで
2024年2月25日、埼玉県本庄市にある本庄第一高校でとある講習会が行われた。 講師はTリーグでも活躍する出澤杏佳(専修大)に加え、直前まで群馬県高崎市で開催されていた全国卓球選手権大会に参加していた多田浩嗣(京都大学卓球部監督)、堀本真之介(Rallys営業担当)。 参加者は本庄第一高校女子卓球部員の2人と、近隣や関東近郊から集まった小中学生だ。講師陣のトップレベルの技術やわかりやすい指導に、参加者も取り組み、時折笑顔も見られた。 よくある普通の講習会の光景にも思えるが、この場所で卓球の講習会が行われるのは、“奇跡”と言っても過言ではなかった。 実は本庄第一高校卓球部は、2024年3月末で廃部になることが学校側に決められていたのだ。 廃部寸前まで追い込まれたところから、存続が決まり、豪華講師陣での講習会が開催されるまでの奇跡の物語を、部員の父・半澤康さん視点の手記で振り返る。
「署名活動しませんか?」1本の電話
2022年9月29日の夜19時頃、本庄第一高校卓球部のOGの保護者・松村さんから一本の電話がありました。 「署名活動しませんか?」 本庄第一高校の卓球部は2024年3月末で廃部になる事が決まっていました。 私の娘は卓球部の1年生(当時)。2年間しか部活ができない事はわかっていましたが、それでも娘はこの学校を選び、もう一人の同期・鈴木さんと卓球部に入部しました。 私自身、中高と卓球を続けたことでたくさんの事を学び、大人になってからもその経験が人生の大きな支えとなっています。 「娘にもなんとか高校3年まで卓球をさせてあげたい」。以前から部活動存続のために何かできないかと考えていたので、松村さんの電話に即答しました。 「すぐ始めましょう!ありがとうございます!」 松村さんからの電話の翌々日には部活動存続のための請願書や署名用紙が完成し、署名活動を開始しました。
理事長に卓球部の存続を訴えるも
人脈のある松村さんは多くの方々への声がけで署名を集め、私はTwitter(現X)を活用して署名活動を行いました。 卓球部の卒業生らの協力もあり、全国各地から寄せられた署名は約1ヶ月で2,216人分にもなりました。 僕と松村さん、卓球部OGの橋本さんの3人で署名を提出する為に学校へ出向き、理事長に卓球部の存続を訴えました。 しかし、「理事会で決まった事なので今からそれを変えることはできない」との返答。 署名を寄せていただいた方々や応援していただいた方々からの温かいお気持ちは、涙が出るほど嬉しかっただけに、本当に残念な結果となりました。