中国製EV、欧州でシェア維持-EUとの通商対立エスカレートでも
(ブルームバーグ): 中国の電気自動車(EV)ブランドは、低迷する欧州の市場で5月にシェアを維持した。調査会社データフォースによると、比亜迪(BYD)といった中国EVメーカーの欧州EV販売台数全体に占める割合は約8.7%で、ほぼ前年並みだった。総販売台数は12%減の1万3390台で、落ち込み幅は欧州全体の完全EVモデルよりもやや大きかった。
4日からは、欧州連合(EU)が安価な中国製EVから域内製品を守るため、関税を暫定的に引き上げる。
EUが中国製EVへの関税率を微修正、追加情報収集後-関係者
欧州におけるEVシフトは最近鈍化しており、5月の完全EVの販売台数は11%減少し、域内の乗用車市場全体の14%にとどまっている。
とはいえ、EUが今後2035年までにガソリン車の販売を段階的に廃止していく中で、バッテリー駆動車が取って代わる見通しに変わりはない。
中国自動車メーカーはここを商機とみている。低価格のバッテリー技術と中国政府による支援が、フォルクスワーゲン(VW)、ステランティス、ルノーといった欧州メーカーよりも中国メーカーを優位にしてきた。こうした補助金によって中国はEUとの貿易戦争の瀬戸際に追い込まれ、報復する意向を示している。
BMWのスポーツタイプ多目的車(SUV)「iX3」、ルノーの「ダチア・スプリング」、テスラの「モデル3」などの中国製モデルも関税の対象となる。調査会社ジャトー・ダイナミクスによると、欧州全土で販売されるEVのほぼ5台に2台が中国製だという。
より広範に見れば、EV購入補助金の廃止や縮小が、引き続き需要を損なっている。欧州最大の自動車市場であるドイツでは、昨年末にバッテリー電気自動車への奨励金が打ち切られたため、5月の販売台数は前年同月比で31%減少した。
EUとの協議で貿易戦争を回避できる可能性がある一方で、中国はメルセデス・ベンツグループやBMW、ポルシェといったドイツの高級車メーカーに打撃を与えるような大型エンジン搭載車への課税で報復すると警告している。中国当局はまた、新たなEV関税を阻止するために、フランスのブランデーやスペインの生ハムにも狙いを定めている。