藤井聡太を「254日天下」で終わらせた伊藤匠新叡王の「ありえない少年時代」
新叡王の素顔
大学の将棋部に所属する川島さんは、今回の叡王戦第5局を部室で観戦したという。 「授業を終えた後、将棋部の部室でほかの部員と一緒に観戦していました。終盤の途中まで藤井さんがリードしていたと思います。逆転するのは少し難しいかなと思いましたが、そこからの伊藤新叡王の粘りが見事でした。混戦に持ち込んでからはさすがの終盤力を見せ、うまく勝ちきったなという印象です。最後はノーミスに近かったと思います。本当に素晴らしい勝利だと思います」 幼なじみの劇的勝利を受け、すぐにお祝いのメッセージをLINEで送ったという。 「シンプルに『おめでとう。これからも名勝負を期待していますね」と送りました。対局を終えてからまだ数時間しか経っていないので、さすがに返事はまだ来ていません(笑)。今は取材対応などで大変だと思います」 川島さんは「彼は天才ですからね。あれほどの天才に出会えたというか、出会ってしまったというか。彼の存在は少なからず僕の人生に影響を与えたと思います」と明かす。プロを目指さなかった川島さんは法曹界を目指して勉強の日々だ。かつてしのぎを削った2人の歩む道は分かれたが、親交は続いている。幼なじみから見た伊藤の素顔とは? 「年に数回、タイトル挑戦が決まったときなどに決起集会のようなものが開催され、そこで会っています。いまでも2人でいるときは将棋の話しかしません(笑)。昔も今も寡黙。人と付き合うのが得意ではないと思います。棋士以外の人生はなかったと思いますが、もし違う人生を歩んでいるとすれば、学者や研究者だったと思います。 一方で、負けず嫌いでストイックなところは増していると思います。変化があるとすれば、厳しい世界で揉まれて感情面を一切出さなくなったこと。僕のような普通の大学生とは違う領域のメンタルです」 幼き日のエピソードから「藤井を泣かせた男」という異名を持つ伊藤だが、今回の勝利によって「藤井から初めてタイトルを奪った男」と呼ぶ声も出ている。だが、川島さんは、これはスタートに過ぎないと考えている。 「これで将棋界の勢力図が変わったと言っても過言じゃないと思います。2人のタイトルの数がどうなるかっていう興味もありますし、2人がどんな将棋を見せてくれるのか、そこにも注目しています」 同学年の天才2人が新たにどんな物語を生むのか。今後に注目だ。 ・・・・・ 【つづきを読む】二人の天才、藤井聡太と伊藤匠の「少年時代からの因縁」の衝撃...二人を下した「もうひとりの天才」が明かす
週刊現代(講談社)