貧困と闘い超能力で正義を貫く姉妹の壮絶なサバイバル…未来を開く壮大なSF物語に「王道味」「早く続きを読みたい」と大反響【作者インタビュー】
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、貧困のために身を売らなければならない姉とその妹が超能力を得て厳しい現実に立ち向かうサイエンス・フィクションが面白いと話題の「少女は、透明な力で裁きを下す」をピックアップ。本作はサンデーGXで連載中の「アンダーク 新しい透明な力のすべて」(小学館)の第1話「暗黒超新星」が正式なタイトルとなっている。 【漫画】超能力ドラマが心を揺さぶる…超能力と貧困の狭間で生きる姉妹の愛と絆の物語に「ぞくぞくする!」「面白い」と話題続出 作者のアキリさんが2024年11月25日にX(旧Twitter)に投稿したところ、1万6000件を超える「いいね」を獲得し、SNSやレビューでは「ぞくぞくする!」「姉妹のハード過ぎる人生」「王道味さえ感じさせる」など多くの反響が寄せられた。本記事では、アキリさんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。 ■知らずのうちに超能力を得た杏は布団から空中浮遊する 黒い巨星が、地球からわずか10光年先で人知れず存在し、突如として爆発を起こした。その影響は磁気嵐やオーロラとなって地球を包み込み、同時期に原因不明の高熱が若者たちを襲う。貧しさの中、姉妹二人で生きる高校生1年生の喜崎真莉愛と小学校6年生の杏もまたその能力に目覚める。母を亡くして以来、杏を養うため真莉愛は裏社会に身を売り、妹には貧困と屈辱を隠し続ける。超能力を手にした杏は、いじめっ子をこらしめたり、物体を自在に切り裂いたりする力に歓喜するが、その陰で真莉愛は売春組織の金田に操られ、日々を耐え忍んでいた。 しかし、金田が杏までも斡旋して勧誘をしようとしたとき、真莉愛は杏が心配で耐えられなくなる。彼女は超能力を使い、客の腕や指を折り、金田さえ殺害する。幼い妹をこれ以上危険に晒したくないと、真莉愛は懇意にしていた児童養護施設へ杏を託し、自らは闇へと消える。半年後、中学生となった杏は、いつまでも戻らない姉を探し求め、施設を抜け出すのだが…。 貧しく、身売りしなければならない現実と超能力を手に入れて人生を変えていこうとする姉妹の超能力サバイバル・ストーリーにSNSやレビューでは「早く続きを読みたい」「面白い」など、多数のコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。 ■「1話目で姉妹の絆をしっかり描いておくという点です」作者・アキリさんが語る創作の裏側とこだわり ――「少女は、透明な力で裁きを下す」(「アンダーク」)のモチーフはどのようにして生まれたのでしょうか。 きっかけは劉慈欣の「三体」シリーズでした。前作「ヴァンピアーズ」の連載が終わり自分の手を離れた昨年初夏、長らく積読していた「三体」三部作を最優先で読み終えました。そのとき、子供時代に夢中になった小松左京先生の壮大なSF作品を強く思い出しました。 11歳で小松作品(「神への長い道」)に出会いSFの世界に魅了され、18歳のとき初めて四季賞に投稿した漫画はSFで、学生時代はSFを読み漁り、アキリというペンネームはSF小説のキャラクター名(グレッグ・イーガン「万物理論」)で…こっそりSF大会に参加したこともある。 このように、長年SFに親しんできたにもかかわらず、漫画家としてこれまでの私はSFからは遠い作品ばかりを描いてきました。そんな中で「三体」を読み、あまりの面白さとスケールの大きさに圧倒され、気がついたら自分も“大きなSF” をやってみたいと思わせられていました。 漫画でSFをやるなら…と考えたときに最初に思い浮かんだのが大友克洋先生の「AKIRA」でした。「AKIRA」は親の本棚にあった数少ない漫画のひとつで、幼少期から繰り返し読んできた、自分にとって特別な作品です。「AKIRA」や「童夢」のような名作に肩を並べるような作品は到底描けませんが、20年以上漫画を描いてきた今なら自分なりのアプローチで超能力モノが描けるかもしれないと思い、本作のモチーフが生まれました。 劉慈欣・小松左京的ラージスケール感、大友漫画の超能力、現代社会が抱える問題、自分が得意とするキャラクター像ーーそれらを混ぜ合わせ、担当編集と議論を重ねながら作り上げたのが「アンダーク」です。 ちなみに、主要キャラクターの喜崎真莉愛という名前は、小松先生の「ゴルディアスの結び目」の登場人物であるマリア・Kを意識して名付けたものです。SFの魅力を教えてくれた小松先生へのささやかな敬意を込めています。 ――本作ではストーリー構成上、人物や背景そして超常現象が微細に、リアルに描かれています。表現上、工夫された点はどこでしょうか。 超能力という非現実的な要素を扱いつつ、キャラクターの行動や感情は現実的に感じられるよう、細部にこだわっています。特に、キャラクターの言葉遣いには気を配っています。かつて大量に読んだ少女漫画の影響もあって、自然な日常会話を組み立てることを意識しています。 また、作中世界の広がりを感じてもらうため、報道シーンなど、引いた視点の描写を随所に挿入しました。 SFの醍醐味である「設定の解説」部分についても、読者が難解に感じないよう、分かりやすい表現を心がけています。 ――貧しい姉妹が主人公ですが、超能力を得て物語が進展していきます。本作を描く上でアキリさんがこだわった点がございましたら、教えてください。 1話目で姉妹の絆をしっかり描いておくという点です。これから展開される物語において、彼女たちの絆が基礎となるためです。 姉妹関係の下敷きには、シュメール神話の「イナンナの冥界下り」を置きました。この神話を元に、純朴な妹・杏と、闇を抱える姉・真莉愛の関係性を描いています。イナンナとエレシュキガルの姉妹関係は漫画的でわかりやすいコントラストを持っていますが、冥界下りのエピソード全体を眺めると多くの謎や矛盾が潜んでおり、むしろわかりにくく、現代的な解釈を加えて語る上で非常に魅力的だと感じています。 超能力を得たことで生活が豊かになるのではなく、むしろ歪みや葛藤をもたらす。そうした状況の中で、姉妹がどう進み、何を選び取るのかを、基礎や下敷きに立ち返りながら丁寧に描いていきたいと思っています。 ――本エピソード(「少女は、透明な力で裁きを下す」)で、アキリさんお気に入りのセリフやシーンなどがございましたら教えてください。 お気に入りのシーンは、66~67ページの真莉愛の見開きです。過酷な境遇に耐え、ヤングケアラーとして生きてきた真莉愛が、ついに限界を迎え、闇落ちする。その瞬間の凄みを顔の表情一発で表現するため、慎重に作画しました。 この見開きは、大友克洋先生の「童夢」終盤に登場する伝説的な見開きへのオマージュでもあります。超能力モノの象徴的な構図を自分なりに描くことで、本作がそういった作品群へのリスペクトから生まれたものであることを表現しました。 ――本作で読者に注目してほしい点などがありましたら、お聞かせください。 姉妹の行く末はもちろんですが、本作で扱う「透明な力」、その力がどう人間関係や社会に影響を及ぼすのかにもぜひ注目していただきたいです。 また、姉妹の絆だけでなく、彼女たちを取り巻く江波(えなみ)や神(じん)といった脇役たちの人間臭さや葛藤にも注目してほしいです。それぞれのキャラクターが力をどう受け止め、どう行動するのかが、物語の面白さをさらに深めてくれると思います。 ――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。 「アンダーク」を手に取ってくださり、本当にありがとうございます。この作品が少しでも皆さんの心に残るものであれば嬉しいです。 作品タイトルの「アンダーク」は、「Un(否定)」+「Dark(闇)」で、「闇の否定」を意味します。重いテーマや描写もありますが、その中に確かに存在する希望や絆といった光の部分を感じ取っていただけたらと思っています。 これからも全力で描いていきますので、どうぞ最後までお付き合いください。応援よろしくお願いいたします!
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