週刊・新聞レビュー(10.28)「閣僚の不祥事相次ぎ、ささやかれる年内解散論」 徳山喜雄(新聞記者)
解散論を唱える毎日と産経
主要報道機関の内閣支持率が急落していないことから、早期の「ダブル辞任」によるダメージコントロールは奏功したいえる。しかし、ほかの複数の閣僚の不祥事が相次いで浮上、民主党をはじめとする野党は追及の手を緩めそうにない。12月には国民に慎重論がある消費増税の判断や、来年には集団的自衛権の行使容認をめぐる法整備も控えており、このままで乗り切れるのだろうかという危惧もある。 毎日と産経新聞はこのような状況に注目し、年内解散論を唱えた。 毎日は10月28日朝刊で「じわり解散ムード」との見出しをとり、「政府・与党の一部には『負け幅が少ないうちに』と早期解散を求める意見がくすぶり始めている」とし、「自民党執行部に近い中堅議員は『再増税の判断を保留し、12月解散に踏み切ってはどうか』とつぶやく。なお堅調な内閣支持率を踏まえ……衆院選で政権が信任を得て、改めて重要政策に着手するシナリオだ」と読み解いた。 産経28日朝刊も「年内解散論が急浮上」との見出しで、「来年10月の消費増税の10%への引き上げを先送りし、『経済再生』を争点に掲げて一気に反転攻勢に出るというシナリオが浮上しているのだ」と伝えている。 早期解散にリスクがないわけではない。この点について同じ記事のなかで毎日は「ただ消費増税の延期や中止は……国際市場から日本の財政再建への姿勢も問われかねない。安倍政権が閣僚の不祥事どころではないリスクを抱え込む懸念もはらんでいる」とし、産経は「自民党の勢力が現在の294から減らし、公明党と合わせた獲得議席は、衆院での再議決や憲法改正の発議に必要な3分の2以上が困難になる可能性が高い」と押さえていた。 師走にむけてどのように展開していくのか、気になるところだ。(2014年10月28日) ※この批評は東京本社発行の最終版をもとにしています。 ----------------- 徳山喜雄(とくやま・よしお) 新聞記者。近著に『安倍官邸と報道―「二極化する報道」の危機』(集英社新書)。