SDV世界ランキング:1位はやっぱりテスラ、「予想外」のトップ5はどこ? 日本は…
7割が取り組むSDV、気になる日本は「最低クラス」……
現在では67%もの自動車メーカーが何らかの形でSDVに取り組んでおり、今後も急速な成長と競争の激化が予想されている。特にSDV部門でリーダー、あるいは競争力のある企業と評価された企業全体の実に64%が中国企業であり、SDVにおける中国の独占状態が起きる可能性がある。 評価基準のうちのプラットフォームレディネス、オーガニゼーションレディネス、全体のSDVビジネスパフォーマンスでは、新興EVメーカーや中国OEMが既存の自動車メーカーを上回る結果となった。 一方で、日本のOEMはすべてのカテゴリーで遅れを取っており、今回分析対象となったすべてのOEMの中で最低クラスの評価を受けている。ただし、最近日本では政府主導で2030年から35年の間にグローバルのSDV市場の3割を奪取するという目標を掲げており、挽回も期待されている。
期待のSDV市場、普及を阻む4つのハードル
近い将来の発展が期待されるSDVだが、普及を阻む要素も存在する。Wards Intelligenceが自動車メーカーなどに対して行ったアンケート調査の結果から、以下の4つがSDV普及へのハードルとして浮かび上がってきた。 1)レガシー・システムズ 車両アーキテクチャーの世界では、ECU(電子制御ユニット)の複雑な分散を処理するためTier-1が管理するサプライチェーンが長年信頼されてきた。1台の車両に約150個のECUがある場合、これらの関係を管理することは非常に困難になる。 強化するためには、自動車メーカーはハードウェアとソフトウェアの両方のコンポーネントに対する制御と適応性の向上に取り組む必要がある。バリューチェーンの中で関連性と収益シェアを維持または拡大するよう構築されたサプライチェーンを一気に変えるのは困難である。 2)不確かなROI 自動車メーカーに対する投資とより高い収益を求めるプレッシャーが高まる中、自動車メーカーは次のようなものを模索する必要がある。まず、収益を生み出す革新的な方法だ。ただし、従来のインフォテイメントのサブスクリプションではほとんど失敗することになる。 2つ目に、付加価値のあるアプリと機能のための堅牢なプラットフォームを構築することで顧客をサポートする必要がある。将来のアップデートに備えて適切なハードウェアリソースを割り当てることも重要となる。 そして3つ目に、ビジネスケースの策定と計算の方法の変化だ。最終的にはサブスクの必要なしに顧客が必要とする機能を自由に購入するビジネスモデルの導入が望ましい。 3)柔軟性 車両ソフトウェアを変更するという課題は、多くのOEMにとって厄介な問題となっている。車両システムの複雑な所有権と分散した調達が必要となるためだ。 しかし、たとえばフォルクスワーゲングループは、2025年までに現在90%をサードパーティープロバイダーに依存している車両のソフトウェアの60%を社内で作成することに取り組んでいる。ソフトウェアの所有にかかる費用は、開発、保守、運用、資格のある人材の採用に関連する膨大なコストを考慮すると、莫大な費用となる可能性がある。 社内開発ルートは市場投入までの時間が長くなる可能性が高く、一見すると今日のビジネス環境ではマイナスと捉えられがちだが、ソフトを内製化することでより柔軟性が得られる可能性がある。 4)専門性 SDVの台頭によって生じた新たな課題として、独自のスキルセット、特にソフトウェアの習熟度の要求がある。その結果OEMは、かつてはサプライヤーの責任であった機能を担う、あるいは従来とは異なるツールの使用を余儀なくされている。社内ソフトウェア開発への移行は、業界にとって大きな転換点となっている。企業は、現代の自動車産業の絶え間なく変化する需要に対応するために適応していく必要がある。 しかしEV販売の停滞が報道されるが、ネックとなっているのは価格であり、今後廉価版のEVを各社が出すようになればEV市場は膨らむという見方がある。そしてEVに人々が期待する機能として欠かせないものがSDVだ。 Wards Intelligenceの予想では2030年のEV市場は24年の倍近くになる見込みであり、SDV市場もそれに伴い今後も増大すると予想される。この市場で3割のシェアを得ることができるのか、今後の日本メーカーの動きにも注目したい。
執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子