円安好き日本株の変節、慢性化でデメリット警戒-コスト増す内需打撃
名目賃金8カ月ぶり高い伸び、26カ月連続増-日銀正常化へ好材料
ただ、米国では景気が好調を維持する中でインフレが思ったほど下がらず、早期の利下げ観測は急速に後退している。為替市場では24日早朝現在、心理的節目の1ドル=155円突破も視野に入る円安・ドル高水準で取引されている。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストはリポートで、157円を超える円安になれば、輸入コストの上昇が賃上げを相殺し、実質賃金がプラスに転じることは難しくなるとの見方を示す。
152円超える円安は日本株のマイナス要因になる可能性-JPモルガン
内需セクターの一部では、既に円安が株価の重しになっている兆候がうかがえる。鉄道や運送会社などで構成されるTOPIX陸運業指数は、23日時点の年初来パフォーマンスがマイナス0.2%と33業種の中でワースト2位。TOPIXの上昇率13%を大きく下回り、投資家の長期売買コストを示す200日移動平均線を下回っている。
TOPIX小売業指数も7.9%高と、市場全体の上昇率に届かない。訪日外国人による旺盛なインバウンド消費需要を受け、百貨店の三越伊勢丹ホールディングスやエイチ・ツー・オーリテイリングといった一部銘柄は好調だが、同指数採用の194銘柄のうち4割弱がマイナスだ。
みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジストは、円安によるコスト増が内需の回復を削いでしまうリスクがあると指摘。小売株については「値上げの効果も一巡してくる。個人の節約志向が強まらないか見極めたい」と言う。
円安がインフレを押し上げる影響は今のところ限定的との見方もある。楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、現状の為替水準なら、輸入物価指数の上昇率は現在の1.4%前後から急激に上昇することはないとの認識だ。
一方、さらに円安が進んだ場合、日銀の利上げが早まるとの見方が強まる可能性もありそうだ。日銀は円相場誘導のために金融政策を変更することはないとしているものの、植田和男総裁は為替の動向が賃金と物価に無視できない影響を与えそうなら、金融政策として対応する理由になるとも述べている。