【京都】静謐な空間でリラックスして熟成茶を味わう至福【現代のティーサロンを訪ねて】
一杯の茶を通して、亭主と客が心を通わす、茶の湯。それはコミュニケーションの形でもある。とは言え、作法の定まった伝統的な茶会は気後れしてしまうことも。もっと自由に一服できる、現代のティーサロンを東西に探した 【写真】現代のティーサロンを訪ねて
台湾の数寄人が捉えた現代の茶室
今年6月に京都・八坂神社のそばにオープンした「POUYUENJI KYOTO(ポウエンジ キョウト)」は、専用のセラーで寝かせた年代物の茶葉を愉しむティーサロン。 熟成させた茶葉の世界有数のコレクターである台湾の蔡其建(ツァイ・チーチェン)氏が、茶を飲むことを文化的文脈の中に置きたいという思いから立ち上げた、ティーエクスペリエンスブランド「ポウエンジ」による世界初のティーサロンだ。 チーチェン氏の年代ものの茶葉のコレクションから、ジェネラルマネージャーを務める息子の蔡明倫(ツァイ・ミンルン)氏が茶葉を選び、サロンで提供する。「愛する茶の世界を広く分かち合いたい」というチーチェン氏の思いが形になったサロンは、茶を介して、文化や移ろいゆく自然に触れる場となっている。
そもそも熟成茶とは、茶葉を摘んだ後、酸素が極力ない環境で一定の温度で茶葉を寝かせたもの。ポウエンジでは熟成茶の中でも9年以上寝かせたものをヴィンテージとしている。中には70年ほど熟成した茶葉もあり、京都では湿度50~60%、室温25度の専用熟成セラ―で保管されている。 熟成させるうえで、茶葉の中に含まれる水分や空気を追い出すために緊圧という工程で圧縮し、円盤状に固められ保存される。コレクターのチーチェン氏が時おり、試飲しながら飲み頃の熟成度合いを見極め、ブティックやサロンで提供するという。 熟成茶の代表格であるプーアル茶は、こうして何年も寝かせることで果実が完熟したような甘い香りが醸し出されるとのこと。しかし、茶を淹れる際には、カチカチの円盤型の餅茶をほぐす必要があり、茶葉をほどくには熟練した技が必要。