モデル前田エマ「韓国作品の根底に悲しみややりきれなさを感じる」日本で韓国に触れられるおすすめスポットも
韓国のドラマ、映画、そしてBTSに夢中になったことがきっかけで韓国・ソウルに半年間語学留学をしたモデルの前田エマさん。暮らすことで気づいたこと、韓国と日本のカルチャーの違い、韓国の歴史……前田さんの視点でみた韓国の「今」についてお話を伺い、日本にいながら韓国カルチャーを感じることができるスポットも教えてもらいました。 【写真】モデル前田エマおすすめの韓国最旬カフェ、アートスポットほか
■韓国作品の根底に悲しみややりきれなさを感じる ――日本にいながら韓国のカルチャーを楽しむのと、実際に韓国に滞在して現地のカルチャーに触れるのでは、違いはありましたか? 前田さん:私自身はそこにはあまり違いを感じませんでしたが、韓国には男性に兵役義務があるので、男女の差が日本以上に色濃く、暮らしに反映されているのだと改めて実感しました。 そして、韓国の作品では繰り返し描かれているテーマではありますが、私が想像していた以上に韓国は家父長的社会だと思いました。結婚に対しても、日本以上に昔ながらの価値観が蔓延っているのだと、年配の方とお話ししている中で感じました。 そういった社会的背景があるからこそ、『82年生まれ、キム・ジヨン』のような、女性たちの連帯を生み出すフェミニズム作品が続々と生まれるのかもしれません。 著書でも紹介していますが、ハン・ガンという世界的な作家が書いた『菜食主義者』や、キム・ヘジンの『娘について』など、女性が受けて来た抑圧や母娘の問題をテーマにした素晴らしい小説がたくさんあります。ぜひ読んでみて欲しいです。 ――韓国カルチャーのエッセンスに触れる機会がどんどん増えてきていますよね。推し活もまだまだ盛り上がりをみせています。 前田さん:韓国は自由を抑圧されてきた歴史を持っています。今、北朝鮮とは休戦状態ですし、社会格差は広がる一方……たくさんの問題を抱えている国です。そのため韓国で生まれた作品の根底には、どことなく悲しみや、やり切れなさが流れているような気がするんです。 そんなやり切れなさと同時に、今感じている不満に意見を言っていく力強さもあります。そういった部分に自分たちが背負っているものを重ねて共感し、また時には力をもらっている。だからここまで魅了されてしまうのかもしれません。 それと韓国のカルチャーは、世界中の様々な文化をいい意味でごちゃ混ぜにしてもいるような気もします。そういったミックス感が、懐かしく感じる一方、新しく感じる部分もあり、絶妙なバランスが魅力的に映るのかもしれませんね。 ■今注目しているカルチャーは韓国ミュージカル ――前田さんが今、韓国カルチャーの中で魅了されているものはありますか? 前田さん:帰国してからはあまり新しいものに触れられていないのですが、ミュージカルに注目しています。日本からも観に行くファンの方が多いそうで、一大コンテンツになっているようです。 日本の下北沢とは比べ物にならないくらい、小さな劇場が並んでいる演劇やミュージカルの聖地のようなエリアがあるんですが、そこはとても活気に溢れていて、散策するだけでも楽しい場所。ソウルを旅した際は立ち寄ってみてください。 韓国で好評だったミュージカルの日本版が上演されることも増えてきています。最近日本で上演されていた『ラフヘスト~残されたもの』は、第8回韓国ミュージカルアワードで作品賞、脚本賞、音楽賞の主要3部門を総なめにした作品。 韓国を代表する天才作家といわれている詩人イ・サンと、韓国抽象美術の先駆者キム・ファンギ、この二人に愛されたキム・ヒャンアンという女性の物語です。韓国では誰もが知っている実話なのかもしれませんが、私には新鮮で「人生は小説よりも奇なり」とは、まさにこのこと。まだまだ知らないことがたくさんあることに、ワクワクしました。