アラスカのウミガラス、海洋熱波で約半数死滅 近代史で最大規模
(CNN) 海洋熱波によりアラスカのウミガラスの約半数が死滅したことが研究で明らかになった。これは単一種の死滅としては近代史上、最大規模であり、海水温の上昇によって引き起こされた海洋環境のより広範な変化を示している。新たな研究は、この変化について急速かつ激しい生態系の再構築を引き起こし、こうした動物の繁栄を阻害していると指摘する。 【写真】「ブロブ」発生以前のウミガラスのコロニー 「ブロブ」と呼ばれる北東太平洋の熱波は2014年後半から16年にかけて、米カリフォルニアからアラスカ湾の海洋生態系に広がった。 サイエンス誌に今月12日に掲載された研究論文の共著者ブリー・ドラモンド氏は、この現象について最大かつ最長の海洋熱波と考えられており、海面の水温は通常より2.5~3度昇したと述べた。 ペンギンのタキシードに似た独特の白黒の羽毛で知られるウミガラスは、北半球の海洋食物網においてエネルギーの流れを調整する重要な役割を果たしている。 ウミガラスは、環境や人的要因の結果として過去にも比較的小規模な大量死を経験したが、通常は環境が好転するとすぐに回復する。しかし、今回の熱波での大量死の規模と速度は、特に憂慮すべきものだった。 研究者はアラスカ湾とベーリング海の13のコロニー(集団繁殖地)で発生した極度の個体数減少を追跡。16年末までの減少の規模を見極めた。これらのコロニーでは長期にわたって観測が続けられている。 その後生物学者たちはウミガラスの死滅率と繁殖率を追跡したものの、コロニーが以前の規模に戻る兆候は見つからなかった。 研究によると、アラスカの海水温が上昇したことでウミガラスの食料は減少した。主な獲物の一つであるマダラは13年から17年の間に約80%減少したという。この重要な食料源の崩壊により、14年から16年の間にアラスカで約400万羽のウミガラスが死んだと推定されている。 14年に熱波が起きる前、アラスカのウミガラスの個体数は世界の海鳥種の個体数の25%を占めていた。 しかし、熱波前の7年間(08~14年)と熱波後(16~22年)を比較すると、先の13のコロニーのウミガラスの個体数は52~78%減少していることが判明した。 ウミガラスの個体数が回復しない理由を完全に解明するにはさらなる研究が必要だが、ドラモンド氏のチームはこの変化について、海洋生態系の変化、特に食料供給に関連する変化によって引き起こされていると考えている。 アラスカ大学フェアバンクス校の野生生物生態学准教授、ファルク・ヒュエットマン氏は、繁殖の問題や移住の難しさもウミガラスの回復がみられない一因になっている可能性があると指摘する。同氏はこの研究に関わっていない。 他の種と異なり、ウミガラスなどの海鳥は繁殖に時間がかかるため、再繁殖のプロセスは遅くなるという。 さらにヒュエットマン氏は、ウミガラスはコロニーに住みつくため、移住を余儀なくされ、新しい環境に適応することはさらに難しい可能性があると述べた。