「いつ食いついてくるかを待っていた」広島MF川辺駿、飛び出し→股抜き→精密クロスで復帰後初アシスト
[9.14 J1第30節 鹿島 2-2 広島 カシマ] 果敢な背後への飛び出し、相手の逆を取っての持ち運び、精度の高いクロス――。サンフレッチェ広島の一時逆転につながる2点目はMF川辺駿の真骨頂と言える一連のプレーから生まれていた。 【写真】「スタイル抜群」「目のやり場に困る」“勝利の女神”のアウェー遠征に反響 1-1で迎えた前半36分だった。左サイドでMF東俊希が前を向くと、川辺は3-4-2-1の3列目から左サイド裏にスプリント。「自分たちの狙いでもあるし、アグレッシブにどんどん裏に抜けて行ったり、チャンスを作りに行くのはチームの良さであり、自分の良さでもある」。浮き球のパスをタッチライン際で収めた。 その時点ですでに次の駆け引きにも入っていた。背後からはDF関川郁万が追いかけてくる中、あえて背負うように見せかけながら急速なターン。「いつ食いついてくるかというのを待っていたし、食いついてくるのを誘っていた」。相手の勢いを逆手に取って股を抜き、フリーでゴール方向に向か右ことでビッグチャンスを作り出した。 最後は逆サイドから走り込んできたMF松本泰志を視界に捉えると、マイナス方向へのパスを相手に警戒させつつ、ゴール正面に鋭いグラウンダークロスを配球。「その後も抜いただけじゃなく、ゴールにつなげられて良かった」。松本がワンタッチで合わせる形で勝ち越しのゴールが決まった。 川辺にとってこれが今夏の広島復帰後初のアシスト。欧州シーズン終了後にグラスホッパーを離れ、夏場の加入で徐々にコンディションを上げてきた中、ようやくスイスでの成長を結果で示してみせた。試合後、川辺は「今日みたいに自分にとって結果を出さないといけない試合で結果を出せたのは大きく成長した部分。生きるか死ぬかの状況でプレーしてきて、そこは研ぎ澄まされたと思う」と手応えも口にした。 もっとも、チームの結果は2-2のドロー。後半36分の川辺の交代直後に相手の同点ゴールが生まれており、悔しさの残る結末となった。広島は今月、ルヴァン杯準々決勝第2戦、天皇杯準々決勝の敗戦により、2つのカップ戦で敗退。勝負が決した失点はいずれも川辺がベンチにいる時間帯で、ピッチに立てていない葛藤も感じていたようだ。 「チームとして2大会失ったのはすごく痛いけど、なんで負けたかは個人的には理解している。甘い部分だったり、改善しないといけない部分は今日の2失点目にもある。最近の試合は70分以降の失点が多い。どう出ている選手でゲームコントロールするかと、交代選手でどういう試合にしなきゃいけないかをもう少し詰めていかないといけない」 「70分以降の失点が多いのは相手にもチャンスがあるということで、それを個人的には改善したいと思っている。試合に出ないと改善するのは難しいし、試合に出つつバランスを見ながら、それはもちろん簡単なことじゃないけどしっかりとやっていければと思う」 週明けのミッドウィークには新大会のAFCチャンピオンズリーグ2(ACL)の開幕も控えており、今後も海外移動も含めた過密日程が続いていく広島。川辺は「出ている選手だけでなく、ベンチも含めていい選手が多いのでチームの総合力が重要になる」と控え選手の存在も忘れなかったが、何より自らがチームを背負っていく気概に燃えていた。