市村正親「伝説のポケモン“ミュウツー”の声もやったからね(笑)」“魂と心”でなりきる、役作りへの意気込み
この役をやるにふさわしいのかどうか自分では分からなかった
――本作は映画『ロード・オブ・ザ・リング』の200年前を描いたオリジナルストーリーですが、ここまで脚本をお読みになった感想はいかがですか? 「すごく面白いです。ヘルムは弓に撃たれて、一度命の危機に瀕するのだけど、そこから娘のヘラとの逃避行や戦いが始まるという展開もまたものすごいんですよ。そのシーンは明日録るので、今はそのために一刻も早く喉を休ませたいですね(笑)」 ――演じるヘルム王のどんなところに魅力を感じますか。 「ヘルムは一国の王としてローハンの民を守り、父親として子どもたちを守る。その生き様というのは、それはそれは壮絶だなと思いました。国民たちのため、息子や娘のために命をかけていくというのは、本当にすごいことです。 僕はとてもじゃないけど、この役をやるにふさわしいのかどうか自分では分からなかったんです。なので“すごい仕事を受けちゃったな”とも思いましたよ(笑)。それでも、スタジオで監督とひとつひとつ積み重ねながら なんとか乗り切りたいと思っています。 僕は体が小さいけれど、50年以上役者をやってきているので、拳ひとつで敵をなぎ倒す“槌手王(ついしゅおう)”と呼ばれるほどのヘルム王のイメージはできているつもりです。 それに最近は、社長や会長、親分といった役どころを演じることが多いし、伝説のポケモン“ミュウツー”の声もやったからね(笑)。僕が持っている魂と心で、このヘルムを作れたらなと思っています」 ときにユーモアを交えながら、次々と質問に答えてくれた市村さん。インタビュー第2回目では、自分の魂がその役になっていれば、声だけでどんなキャラクターにもなれるという市村さんの持論などをお届けする。 取材・文/根津香菜子 いちむら・まさちか 1949年1月28日、埼玉県生まれ。俳優・西村晃の付き人を経て、73年に劇団四季の『イエス・キリスト=スーパースター』で俳優デビュー。退団後もミュージカル、ストレートプレイ、一人芝居など、さまざまな舞台に意欲的に挑戦する。2007年春に紫綬褒章、19年春に旭日小綬章を受章。菊田一夫演劇賞(演劇大賞)、読売演劇大賞(最優秀男優賞)、紀伊国屋演劇賞(個人賞)、森光子の奨励賞、松尾芸能賞(大賞)など受賞多数。近年の主な出演作品に舞台「屋根の上のヴァイオリン弾き」「ミス・サイゴン」「市村座」「生きる」などがある。 根津香菜子
根津香菜子