EUの対中「EV追加関税」、中国政府がWTOに提訴 公正競争に名を借りた保護主義的行為と批判
中国商務省は11月4日、中国製EV(電気自動車)に追加関税を課す措置を欧州連合(EU)が正式決定したことに関して、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。 【写真】中国商務省の定例記者会見で記者の質問に応じる報道官 「EUは、加盟国の政府、関連業界、市民など多数の関係者から反対の声が上がったにもかかわらず、中国製EVに対して高率の補助金相殺関税を課す決定を下した。EV産業の発展と利益を擁護するとともに、世界のグリーントランスフォーメーション(GX)を後押しするため、中国は(WTOへの)提訴を決めた」。商務省は声明の中でそう述べた。
■「貿易救済措置の乱用」 EUの追加関税措置は、事実認識と法的根拠の両面で妥当性を欠くというのが中国側の見解だ。 「貿易救済措置の乱用であり、反補助金に名を借りた保護貿易主義的な行為だ。WTOのルールに違反している」。商務省はそう率直に批判した。 中国製EVに対する追加関税の導入を欧州委員会(訳注:EUの政策執行機関)が正式決定したのは10月29日のことだ。これを受け、EUは翌30日から適用を開始した。この措置は今後5年間継続される。
EUの決定に対して、中国商務省の報道官は10月30日付の声明で強い不満と反対を表明し、次のように述べた。 「中国製EVに対するEUの反補助金調査には不合理な点やルール違反が多々あり、わが国はそれを繰り返し指摘してきた。これは『公正な競争』の名の下で『不公正な競争』を行う保護主義的なやり方だ」 中国のEVメーカーにとって、ヨーロッパ市場は重要な輸出先だった。しかし欧州委員会が反補助金調査に着手して以降、輸出台数は縮小に転じた。中国機械電子製品輸出入商会のデータによれば、2024年1月から8月までの中国製EVのEU向け輸出台数は29万7500台と、前年同期比7.6%減少した。
■EU産ブランデーに対抗措置 「EUと中国は反補助金調査で明らかになった問題の解決に向け、(追加関税の)代替案を探す努力を継続している」。欧州委員会は追加関税の正式決定の声明でそう述べ、将来の措置撤回に含みを残した。 (訳注:上述の代替案とは、具体的には中国メーカーによる価格と数量の輸出自主規制を指す。11月中旬時点で合意の見通しは立っていない) 一方、中国商務省はWTOへの提訴以外にもEUへの対抗措置を繰り出し、揺さぶりを強めている。
商務省の貿易救済局は10月8日、EUを原産地とする200リットル以下の容器に入ったブランデーに反ダンピング措置を暫定適用すると発表。EU産ブランデーを輸入する中国の貿易業者は、輸入金額に応じて一定比率の保証金(デポジット)を税関に納めなければならなくなった。 (財新記者:余聡) ※原文の配信は11月4日
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