米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は?
<予想される僅差での大接戦>
こういった点について現時点では色々なことが言えるわけです。また、このような点に影響された世論が、調査の数字としてトランプ氏有利の傾向をアウトプットとして出してくるというのも、理解できます。問題は本当にこれが投票行動に直結するのかということです。 雇用や物価に不満を抱き、マスク氏の参加に関心を抱くような高学歴の若者層が出てきたのは理解できます。ですが、彼らが本当に「暴力肯定、女性蔑視、ロシア癒着」といった懸念を丸呑みして、トランプに1票を投じることができるのか、これはまだ分かりません。 同じように、ガザでの人道危機、レバノンでの強硬策などを支持するハリス氏に「嫌気」がするからといって、若者や中東系のリベラル票が「露骨に中東系を差別する」トランプ氏に入れるかというと、これも難しい話だと思います。 男性票については、アメリカの現在の基準では一種「女性らしく理想的な外見」を持ったハリス氏が、眩しいほどの「大笑い」をするのは馴染めない、そうした人が一定数いるのは分かります。あの「大笑い」を思い浮かべると、ハリス氏のことを語るのは恥ずかしいという感覚を持つ人もいるでしょう。ですが、だからといって「ならばトランプに入れよう」ということには、そうは簡単にはならないと思うのです。 いずれにしても、決戦州それぞれの勝敗は歴史的な僅差になり、全体も僅差となる中で、当確までの時間も相当にかかるという見通しを持つことが必要なようです。ただ、現時点で出ているトランプ有利の数字は、今回は特に、そのまま受け止めるのは難しいように思います。これから投票日まで、様々なファクターで有権者心理が動いていくと思いますが、今回整理したような要素も頭に入れながら見ていきたいと思います。
冷泉彰彦(在米作家)