自民党総裁選、原発巡りオープンな議論必要-田中元IEA事務局長
(ブルームバーグ): 国際エネルギー機関(IEA)元事務局長の田中伸男氏は4日、日本が長期的な経済繁栄と国家安全保障確保を目指すなら、自民党総裁選で原子力発電所についてもっとオープンな議論が必要との考えを示した。
自民党は27日に総裁選を控えているが、党内での議論が不十分だと田中氏は指摘。原発事故の可能性に対する国民の不安をあおり、選挙結果に響くことを議員らが警戒しているとの見方を示した。
田中氏はソウル市内で、「われわれには福島、広島、長崎という3つのトラウマがあり、これを克服するには、原子力についてさまざまなシナリオを検討しなければならない」とし、「政治家が原子力のリスクとベネフィットについて語らなければ、国民は理解できない」と英語で語った。
日本はなおエネルギー需要を化石燃料輸入に大きく頼っている。
日本の有力政治家は近年、原子力利用に対する姿勢を軟化させたが、ブルームバーグNEF(BNEF)によれば、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロ目標を原子力エネルギーの助けを借りて達成する取り組みで日本はまだ大きく後れを取っている。
国内では原発再稼働の延期も相次いでおり、30年までに新たな発電所を建設する時間はほとんど残されていない。これは電力需要が大きい半導体工場や人工知能(AI)向けデータセンターの長期的な発展には逆風となる。
現状では、福島第1原発の事故後に導入された安全性規制に基づき日本で再稼働している原発は、運転可能な原子炉の約3分の1にとどまっている。
原題:Japan Leadership Race Needs Nuclear Debate, Ex-IEA Chief Says(抜粋)
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Sam Kim, Madeleine Lim