熊本・天草地域の〝お試し農業研修〟 自治体とJAが連携、手厚くサポート
熊本県天草地域のJAと天草市が連携し、即戦力になる新規就農者の確保へ独自の対策を展開している。市は就農希望者が農業に向くか見極める事業などを実施。JAが研修場所の提供や農家の紹介を行う。相談窓口を一本化し、住まいの確保なども手厚くサポートする。 県と市、市農業委員会、JAあまくさとJA本渡五和が2020年に「天草市新規就農サポートセンター」を設立。これまでに12人の就農を支援した。ミニトマトやキュウリ、かんきつ「不知火」、トルコギキョウという地域で生産が盛んでJAなどの指導体制が整い、収益も見込める4品目を推奨する。 市は独自支援で就農を後押しする。例えば「お試し研修事業」は、農家の下で農業体験をする未経験者に1世帯当たり月12万円を3カ月を基本に給付。就農者向けの給付金で多い、就農を諦めたり一定期間で営農をやめたりした場合などにある返還義務がない。2年間の本格的な研修に入る前に農業の適性を見極めてもらう。
「ミスマッチを防ぐことが大切」
研修はJAや農家の下で行う。JAあまくさは18年にミニトマトの栽培を学べる研修用ハウスを建設。計20アールで、2年かけて土耕と養液栽培が学べる。新潟県から移住し、研修中の山下純生さん(56)は「天草は豊かな自然と支援制度が魅力。お試し研修で農作業に体を慣らせたのも良かった」と話す。 お試し研修に訪れる人は年間3、4人だが、その後の2年間の研修に進む人は一部だ。研修用ハウスの盛田洋平場長は「2年間の研修を始めてからやめるのは、研修生自身が苦労する。向かないと判断したら、お試し研修の期間にしっかり伝えてミスマッチを防ぐことが大切だ」と話す。 果樹など他の品目では篤農家が指導する。北海道出身の天野智哉さん(30)は、2年の研修を経て、昨年就農。今年「不知火」を初収穫したばかりだが、玉が大きく傷みも少ない高品質に仕上げている。地域で引退を考える農家から「自分の農地でも作ってほしい」と依頼が相次ぐなど、期待が高まる。 市は、国の就農準備資金や経営開始資金の対象外となる50歳以上の就農希望者や、親元就農者への支援も独自に行う。農地中間管理機構(農地バンク)を通して新規就農者に農地を貸した場合の奨励金も設け、農地の確保も後押しする。サポートセンター事務局を務める市農業振興課は「やる気のある担い手の確保に力を入れていきたい」と話す。
日本農業新聞