低迷相場の突破口となるか? 「トヨタ、9月浮上」説の根拠を探る
4~9月決算発表時点で再増額修正も
2つ目のポイントは、足元の業績動向。同社は8月4日の今3月期第1・四半期(4~6月)決算発表と同時に、通期の連結業績見通しも増額修正した。具体的には、通期の売上高予想を今期立ち上がり時点で打ち出した27兆5000億円を28兆5000億円(前期比3.3%増)に引き上げたほか、本業の儲けを示す営業利益も期初の1兆6000億円予想から1兆8500億円(同7.2%減)に上方修正。 この新たな収益見通しの前提となる為替レートは1ドル=110円(前期実績108円)、1ユーロ=124円(同119円)。ドル・円の前提値は現状とさほど変わらない。しかし、ユーロ・円については足元が1ユーロ=130円台だからかなりの開きがある。ユーロ高・円安メリットを享受するとなれば、通期予想はなお上振れ余地がある、と見ていいだろう。 野村証券では「トヨタの営業利益は7~9月、実に8四半期ぶりに増益に転じそうだ」と予測し、通期の営業利益予想として2兆1820億円と会社側見通しを約2700億円上回る水準を観測している。
「したたかさ」の底にあるもの
トヨタの”したたかさ”の根っこには、円高や円安の企業業績に与える影響を、突き放してとらえる同業他社にはない冷徹さがある。 昨年5月、豊田章男社長は、それまでの過去数年間の業績について円安という「為替による追い風参考記録の部分が多かった」としたうえで、「その風がやんだことで自分たちの等身大の姿が見えてきた」と説明会で語った。それから1年経った今年5月の決算説明会では「為替の追い風も向い風もない中で、まさに現在の等身大の実力が素直に表れた」と話した。こうした状況こそ、掛け値のない真の実力が発揮できる、と豊田社長は見ているのだろう。順調にいけば、11月の4~9月期累計決算時点で、通期予想は再び上方修正されそうだ。 4~6月期決算の発表会で大竹哲也専務が強調していた好材料の一つに、米国向け新型「カムリ」の拡販期待がある。 8月半ばから投入したばかりだが、大竹専務はプラットフォーム、パワートレイン、走行性能、安全性、燃費を「格段に向上させた」(大竹哲也専務)という。