コーチが怒らない野球チーム「野球を楽しむために、大人が邪魔しない」
雨で試合時間短縮が予想され、試合に出られない可能性が高い低学年の選手の中から、コーチが「泥がついたバットやボールを拾う係」「ボールを洗う係」「雑巾で拭く係」を募集。立候補で決めたため責任感が増したのか、試合には出なくても、懸命にボールを拾うなど、役目を果たす低学年生の姿は、ほほ笑ましかった。 ●コーチがサインを出さない。 大人の指示通り動くのではなく、自分で考えたプレーを、がモットー。試合ではどんどん走って点を稼いでいたし、ある外野手が捕球後、セオリー通りでなく、一塁に球を投げた時も、コーチはそれを面白がっていた。セオリーは変わるものだからという。ただし、鍵になる場面では「守備位置。あと5歩、下がろうか」「後ろから捕ろうね」など具体的な指導が見られた。ちなみに、試合後のコーチ陣による講評も極力短くを徹底している。
●練習は土日の4分の1程度。 例えば、土曜の午後4時から7時など。(今は熱中症対策で夕方に練習)そして理由を問わず、欠席可能だ。家族との外出や、ほかのスポーツなどをする環境を確保するため。また練習が短いからこそ、物足りなくて帰宅後に自主練習をする選手もいるという。やる気がなさそうに見えた子でも、何かをきっかけに「もっとうまくなりたい」と思って自主的に練習し、大きく伸びる例もあり、小学生のうちから追い込むような練習は必要ない、野球が好きなら自分から伸びていくという。 中桐代表は「チームのレベルは中の上ぐらい。週1回の練習にしては予想外に力がついてきた」と話す。見ていると、「ゆるい」「何でもあり」ではなく、コーチの話を背筋を伸ばして聞く、控え選手も遊んでいないで、試合展開を意識して集中して応援するなど、指導がされていた。 ●保護者の当番廃止。 共働きが増える中、当番に入る余裕がなく、こどもを野球チームに入れられないという声があるため。さらに特徴的なのは、試合の応援をする保護者に「もっとリード取れよ」「なんで打てないんだよ」といった指示や叱責をやめてもらっている点だ。多くの保護者が試合を見に来た際も、聞こえるのは点が入った際などの拍手のみで驚いた。 ●コーチは保護者やOBではない。 保護者などが指導すると当たり外れが大きいことから、一定の専門性のある人にコーチ代を出して指導を依頼している。準備運動などはトレーナーを仕事にしている人が担当し、理論に基づいた方法や定期健診でスポーツ障害を防止。チーム設立当初は、大学教授から熱中症対策などの助言を受けたという。 また、ある時は中桐代表の母校、早稲田大学の女子学生が小学1年生の捕球練習をサポートしていた。彼らは野球とは関係のない学生で、様々な年上の人と接することがこどもの刺激になると考えてのことだ。