豊川稲荷で初の薪能
狂言は「仏師」、能は「葵上」
「第1回豊川薪能(たきぎのう)」が18日夜、愛知県の豊川稲荷境内の特設舞台で開かれた。大勢の観客が、一流の演者による幽玄な世界を満喫した。【竹下貴信】 東三河各地で薪能は開催されているが、豊川ではこれまでなかった。実行委員会が能楽の世界を知ってもらおうと初開催した。実際に火をともした中で上演した。 仕舞、火入れ式、狂言、能の順に上演した。幕開けの仕舞では、「半蔀(はしとみ)」を味方玄さん、「融(とおる)」を林宗一郎さんが演じた。火入れ式は、山脇実実行委員長、竹本幸夫市長が担当した。 狂言は「仏師」で、シテ・素破(すっぱ)を狂言方和泉流野村派14世当主の野村又三郎さんが務め、こっけいな動きや筋立てで笑いを誘った。 能は、源氏物語の「葵上(あおいのうえ)」で、六条御息所を能楽観世流シテ方の味方團(まどか)さんが務めた。光源氏の正妻である葵上が病にふせっており、それは恥辱を受けた六条御息所の生霊(いきりょう)のたたりのせいだった。この生霊を祈り伏せる物語。般若の面を用いた味方さんの不気味さと気品さを兼ね備えた姿に観客は見入った。