小林聡美「養老保険を解約してピアノを購入、新しいことにも挑戦。ゆっくりと丁寧な暮らし…だけではつまらない」
俳優として活躍するかたわら、エッセイストとして多くの読者の心をとらえている小林聡美さん。最新エッセイ集『茶柱の立つところ』では、50代半ばを過ぎた小林さんが、日々の生活の中で見つけた「茶柱」のようなささやかな発見や喜びをユーモラスな視点で綴っている。いくつになっても、日常を面白がろうとする小林さんの姿勢にクスッっと笑ったり、共感したり。「始めるなら、今がデッドライン!」と、新しいことにも挑戦していきたいと語る胸の内を伺った(構成◎内山靖子) 【写真】「この先、できないことが少しずつ増えていくかもしれません。でも、だからといって『ゆっくりと丁寧な暮らし』だけではつまらない」 * * * * * * * ◆300字書いて、2時間休む 20代で初めてのエッセイ集を出版してから、今回で15冊目になりました。 とくにテーマを決めずにぼんやりと書き始めたことでも、「ああ、私はこういうことを考えていたんだ」と、書き上げてから自分でも気がつくことがあります。 文章を書くのはすごく大変です(笑)。最近はとくに、集中力や体力が続かない。300字くらい書いただけで「なしとげた!」みたいな感じになって2時間くらい休んだり。(笑) 書くのに時間がかかるので、他の仕事と重なるときも、「この日は書く!」とカレンダーに印をつけて、原稿を書く日を確保します。
◆養老保険を解約し、ピアノに挑戦 今回のエッセイは、猫1匹と暮らす私の普段の日常生活を綴ったもので、驚くような事件は何も起こりません。その中で一番大きな出来事と言えば、ピアノを習い始めたことでしょうか。かねてから「楽器が弾ける人生は楽しいに違いない」と憧れていました。 ウクレレやクラリネットを習ったこともありますが、どれもなかなか続かない。でも、ピアノを買ってしまえば、もうやるしかない状況になるに違いない、と。家の中にピアノがあれば嫌でも目に入る上に、高額な買い物ですから放っておくわけにはいかない。(笑) そこで、思い切ってピアノを買ったんです。満期になった養老保険を解約して(笑)。それに、ちゃんと指先や体が思い通りに動くのはあと何年?と考えたら、「始めるなら、今がデッドライン!」と、飛び込むことに決めました。 近所のお教室に通い始めてかれこれ4年めになります。次のレッスンまでにぜんぜん練習できずに、ヘタクソなピアノを先生に聴いていただくこともしょっちゅうです。 でも、ピアノを始めてから、クラシックのコンサートに行ったり、音楽の授業のときしか触れなかった作曲家の伝記を読んだりして、また別の世界が広がったなと感じています。