<わたしたちと音楽 Vol.31>家入レオ×加藤ミリヤ 影も歌に乗せる、内面を開示するというエンパワーメントの方法
変化する自分自身と向き合い、影の部分も音楽に昇華させてきた
加藤:ありがとう。私は10代でデビューして、20代、30代と歌手として過ごしてきて、やっぱり生きている様やどういう風に生活しているかが曲に表れてくるのを感じています。「長く続けているから偉い」とは自分では思っていないけれど、私が長く続けられているのは聴いてくれる人がいるからなので、とてもありがたいことですよね。だから、ライブなどの楽しい場所を作って、感謝の気持ちを伝えていきたいんです。 ――加藤さんは、女性をエンパワーメントするのを使命に感じているとおっしゃっていましたが、昔からそう思われているのでしょうか。 加藤:私は自分がモヤモヤしていることを歌にして、歌手になりました。16歳のときに出した3枚目のシングルは、「ディアロンリーガール」。当時は高校生で、大人がめちゃくちゃ嫌いだったの(笑)。自分をジャッジされるのがたまらなく嫌で、でも自分でも自分のことをわかっていないし、なんだかちょっと寂しかった。ブリーチしたブロンドヘアでその気持ちを歌ったら、周りの女の子たちがたくさん共感してくれたんです。そのときに「私の存在に気づいてくれたんだ」という感覚があって、「私が歌うべきことはこれだ」って、歌を通して女性たちを勇気づけるのが使命だと思いました。それを今もずっと続けているんです。 家入:カッコいいな。私は、女性をエンパワーメントすることについては、これまであまり意識してこなかったんです。女性と男性という性別以外にも限りなくたくさんの異なるアイデンティティがあるし、1人の人間が持つ喜怒哀楽に性差はないと思ってきたんですよね。私自身が、“女性であること”を改めて意識し出したのは、20代後半になってからかな。いわゆる“クォーターライフクライシス”といわれる期間だと思うんですけれど、「これから先、どうやって生きていったらいいのか」と模索する中で、結婚や出産をする友人が増えて、自然にですね。でも、そういう自分の変化する気持ちや何気ない日常から生まれるメロディが一番人の心に響くと思うので、そうやって歌を歌い続けていきたいですね。 加藤:自分が30代になって、「人間ってこんなに変わるんだ」って思うくらい考え方も変わったと思う。女性は特に、ホルモンバランスやライフステージの変化で色々な波がありますよね。でも一度立ち止まって自分自身を振り返ってみると、その年代ごとに一生懸命やってきたのだと思いますよ。私も、その時々の自分と真剣に向き合ってきた結果が、楽曲に現れています。 家入:そうですよね!私は今29歳で、もともと30代を迎えるのはすごく楽しみだったのですが、今ミリヤさんのお話を聞いてより強くそう思いました。自分の恥ずかしい部分や弱い部分も曲にしてきたから。成長するにつれて過去に自分が作ったものを振り返って「なんであのときあんな風に思っていたんだろう」と思うこともあるんですよ。でもそれって、私がちゃんと心の扉を開けて本気で音楽を作ってきた証。私は人に作っていただいた曲を歌わせてもらうこともあるし、それもとても面白いのですが、自分で歌詞を書くこともちゃんと続けていこうと思いました。