ストラット・アッパーマウントを求めてリトアニアへ! ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ 入手困難なパーツを求めてふたたび海外行きを企てる! その3
またしても海外パーツ探し旅を企てるウエダの作戦は成功するのか?
ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけての大規模修復後、走り出したエンジン編集部員ウエダによる自腹散財リポート。2023年はポーランドとフランスを訪ね、エグザンティアに関する2つのイベントに参加したが、2024年は、なんと自腹の部品買い付け旅行に出かけることになった! その経緯をご報告する。 【写真31枚】リトアニアで探して当てたサイトとパーツがこれ! なんとすでにパーツを購入した日本人のエグザンティア・オーナーがいた!! ◆リトアニア西方、カウナス 僕がエグザンティア維持の要となる部品、ストラット・アッパーマウントの再生を行っているリトアニアのエラストマーEU(Elastomer.EU)とやりとりをはじめたのは、結局2024年になってからだった。 対応してくれたのは同社のチーフ・フューチャー・オフィサー、イルマンタス・ガリニス(Irmantas Galinis)さんだ。 エラストマーEUのウェブサイトは今ではずっと現代的でスマートフォンに対応したものになっているが、当時はとてもシンプルな、すごく素っ気ないものだった。そしてこのサイトによれば、会社があるのはリトアニアの首都、ヴィルニュスから西に約100km離れた第2の都市、カウナスだ。 エラストマーEUはその名の通り、ポリウレタンを中心とする熱可塑性エラストマーを扱う会社で、重機などキャタピラーのホイールの補修として、ポリウレタンをホイール外周に再コーティングしたり、金属をはじめ樹脂部品へのテフロンなどのコーティングが本業だ。だが、そうしたカテゴリーの1つとして、ちゃんと“シトロエン・マウント”というストラット・アッパーマウントの紹介ページが用意されていた。 対応しているのはシトロエンXM、BX、そしてエグザンティアのストラット・アッパーマウント。そこには購入から2年の保証があること、40カ国以上のシトロエン・オーナーによる装着実績があること、そしてXMやCXの一部グレード用のエンジンなどのマウント類も手がけていることが記されていた。 なお、同社について調べているうちに、エラストマーEUとすでにやりとりをしている先輩が日本にいることが分かった。しかもエグザンティア・オーナーで、僕のリポート車と同じV-SXグレードだ! ただし日本では希少な、初期型の2リットル16バルブ・エンジンと5段MTを組み合わせた並行輸入車である。 このオーナーは僕のリポート車と同じタイプのアッパーマウントをエラストマーEUから購入している。同社とのやりとりのメールをウェブサイト上で紹介しており、基本的には日本からリトアニアへ愛車のマウントを外して送り、在庫があればすぐ交換して発送してくれること、自分が送ったストラット・アッパーマウントそのものを修理することもできるそうだが、2週間ほど時間を要すること、価格は左右一対で200ユーロということ、送料はリトアニアから日本まで送るのに一対で55ユーロだそうなので、行きの分も含めれば300ユーロ以上が必要、といったことが分かった。 リビルド品ゆえ以前のリポートでご報告した日本シトロエン・クラブが代行しているラバー製ほど高品質ではないようだが、送料を含めてもこちらの方が若干安価だ。 エグザンティア乗りの先輩の報告は2022年当時のことだったので、念のためエラストマーEUのイルマンタスさんに問い合わせると、特にやりとりの方法や金額に変更はないという。 問題は交換用のエラストマーEUに渡さなくてはならないストラット・アッパーマウントである。リポート車に装着しているものを取り外せば絶対に間違いはないのだが、当然部品がリトアニアに行って戻ってくるまでの間、クルマは動かなくなってしまう。どうしたものかと思案していたところ、運のいいことに部品取りのエグザンティア・アクティバ用のストラット・アッパーマウントが、左右1セット、主治医のカークラフトに保管されていることが分かった。アクティバが元気に代車として活躍していた当時、純正の新品部品と交換したために不要となった、新車装着時からの古物だ。後々のために保管していたという。 アクティバが部品取りとなったいまでは使う予定もないそうで、これをありがたく頂戴し、エラストマーEUへ渡すことにした。現物をカークラフトで検品し、リポート車と並べ、取り付けパイプやサイズを確認したが、間違いなく同じもののようだった。 ◆エグザンティアのデザイナーがやって来る? こうして僕はリトアニア・エラストマーEU(Elastomer.EU)のイルマンタスさんに古い純正ストラット・アッパーマウントの写真を送り、部品を特定してもらった。彼は丁寧に接続パイプ部の径や内部の金属ワッシャーの有無なども確認。運良く同社にはちょうど補修済みの在庫があるという。日本から発送すれば、到着次第リビルド品をすぐ返送できるらしい。 もちろん送ってしまえば後は待つだけでOKなのだが、もし僕自身がリトアニアに古いストラット・アッパーマウントともにやって来るなら、その場で見比べて交換できるし、リビルドの工房を見学したり、詳しく話もできるという。とはいえ冷静に考えれば、送料の110ユーロよりも、リトアニアに行く旅費のほうが、はるかに高くつく。 でも、もうとっくに僕は「リトアニアに行こう!」と心に決めていた。なぜなら、ちょうどこのやりとりと前後して、隣国ポーランドの首都ワルシャワで行われるシトロエンXMの生誕35周年イベントの情報が公開されたからだ。その中には、どうしても見逃せないゲストの名前があったのである。 催しを主宰するfrancuskie.plが発表したシトロエンXMの生誕35周年イベントのメイン・ゲストは、自動車デザイナーのダニエル・エイブラムソン(Daniel Abramson)さんだったのだ! 彼はXMをはじめ、仏シトロエン博物館、通称コンセルヴァトワールで僕が実物を目にしたコンセプトカー、アクティバ1や2、そして、もちろんエグザンティアにも深く関わった人ではないか!! しかもタイミングを計ったかのように、FacebookにあるXantia PLというポーランドのエグザンティア・グループに、僕のリポート車とまったく同じ内外装の仕様の解体車の売り物まで出たのである! ずっと探していた青い格子柄のフロント・シートの座面生地もちゃんと残っている! ただし場所はポーランドの首都、ワルシャワから南西330kmのオポーレだった。 ストラット・アッパーマウントのあるリトアニアのカウナス、エグザンティアのデザイナーの来るポーランドのワルシャワ、そしてシートの座面のあるオポーレ。3つの場所をどう回り、どういうルートで動けばいいのか。僕の頭はフル回転しはじめた。 次回はなかなか手強いエグザンティア解体車の売り主との交渉と、見事にパズルがはまって空路が決定し、リトアニアへ出発するところまでをリポートする。 ■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX 購入価格 7万円(板金を含む2023年12月時点までの支払い総額は279万2253円) 導入時期 2021年6月 走行距離 18万3144km(購入時15万8970km) 文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) (ENGINEWEBオリジナル)
ENGINE編集部
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