中国の個人マネー大移動、預金から投資へ-債券と理財商品に資金集中
(ブルームバーグ): 中国国民に預金から投資に資金を移すよう促す政府の取り組みが大きなインパクトをもたらしており、そうした資金の大半が国債などの債券と「理財商品」と呼ばれる資産運用商品に向かっている。
中国の預金総額は4月に1.3%減った。額にして3兆9000億元(約85兆円)の減少だ。当局は先月、銀行が企業に優遇預金金利を提供することを禁じた。高めの預金金利を提供する銀行に資金を預ける一方で、低めの資金を借り入れる「裁定取引」をしている企業に対する締め付けだ。
一方、国民の消費を喚起したい政府は貯蓄率を押し下げるため国有銀行と協力。中国の大手行での1年物の預金金利は過去最低の1.45%となっており、高めのリターンを追求する動きが強まった。
高利回り資産への資金流入はリスク選好を高める政府の取り組みが実を結び始めたことを示しているが、個人消費や株式投資の急増に結び付くまでには至っていない。
だが、中信証券の明明チーフエコノミストは、「裁定借り入れの終わりといった要因が預金再配分を大きくけん引し、この動きは続くだろう。消費と投資に向け人々は貯蓄を取り崩しており、これは政策当局にとって喜ばしいことだ」と述べた。
中信の分析によると、理財商品の残高は4月に2兆9500億元増え、債券資産が最大の伸びを示した。ブルームバーグがまとめたデータでは、中国債に連動する上場投資信託(ETF)が同月、4億2800万ドル(約672億円)を集め、昨年12月以来の大きな資金流入となった。
最大の変化
中国は超長期特別国債の第1弾発行を17日に開始。これに対する個人需要の高まりは、価格を一時25%も押し上げ、売買停止の引き金となった。同時に1年債利回りは2020年半ば以来の低水準に落ち込んだ。
預金からシフトした資金の少なくとも一部が、安全性が高いとされる高配当株へと流れている兆しもある。上海証券取引所の配当指数は今年16%上昇し、先月には2015年以来の高水準に達した。