日本のEEZ内で中国当局が検査「漁業管轄権」とは
中国の尖閣付近での活動が続いています。4月19日には沖縄県石垣市の尖閣諸島・大正島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内で、中国海警局の船艇が中国漁船に横付けし、海上保安庁の巡視船の警告を無視して乗り込み検査をしました。日中漁業協定により、北緯27度以南の東シナ海などついては中国漁船の操業も認められています。しかし、日本のEEZ内には日本の漁業管轄権が及んでおり、中国海警局が検査を行う権利はありません。この漁業管轄権とは、どのようなものなのでしょうか。
「漁業管轄権」とは何か
漁業管轄権とは、1994年に国連海洋法条約が発効した際、沿岸国に対して認められた権利のひとつです。沿岸国は、沖合200海里までの範囲でEEZを設定でき、「漁業管轄権」、「海洋調査権」、「海底開発権」などの権利を有することになっています。うち漁業管轄権については、日本では水産庁が所管する漁業関係の法令に基づいて、海上保安庁が犯罪捜査や海難救助などの実際の運用にあたっています。これに対し、中国海警局の船艇は「この海域は中国の漁業管轄権の範囲内である」というメッセージを送ってきたともいえるわけです。
既成事実を積み上げる?中国の手法
中国の戦術は「三戦」といわれています。世論戦、心理戦、法律戦です。国内では大衆心理を、国外では国際世論や相手国の世論を工作し、恫喝や懐柔などで相手国にプレッシャーをかけ、国際法などを活用したり、相手国の違法性を喧伝したりするというものです。 尖閣諸島の場合は1992年に一方的に「領土」と定め、2010年発効の海島保護法により、「無人島につき国家管理地」とし、2013年11月には、東シナ海上空に防空識別圏設定を発表。本来は航空機の安全航行のためのものですが、防空識別圏で尖閣諸島の上空を覆って領有権を主張するのが狙いとみられています。 今回、尖閣諸島沖で、中国海警局の公船が中国漁船への乗り込みを行ったのも、中国が漁業管轄権を持っているように演出して、既成事実を積み上げるためであったと考えられます。