日本のEEZ内で中国当局が検査「漁業管轄権」とは
フィリピン南沙諸島での事例から見ると
中国が考えていることは、かつて中国とフィリピンの間で起きた事例から推察することができます。 1995年2月、フィリピンの管轄下にあった南沙諸島のミスチーフ礁で、やぐらのような建造物が発見されました。台風でフィリピン海軍の巡視が手薄になった時期をねらって中国がつくったもので、「悪天候から漁民を守るため」と説明。やがてやぐらはコンクリートの建物に姿を変え、現在では軍事拠点となっています。 また、2012年4月には、ルソン島の約180キロ沖にあるスカボロー礁で、フィリピン海軍が中国の密漁船を拿捕しました。すると中国の警備船が現われて、2か月間にらみ合いが続き、荒天のためフィリピン海軍が現場を離れたとたん、中国に占拠されてしまいました。尖閣諸島についても、上陸して実効支配を狙ってくる可能性があります。
2013年8月、尖閣諸島・魚釣島の近くで、日本の漁船が中国海警局の船に「拿捕するぞ」と警告されて追われる事件が発生しました。あと数メートルで追いつかれるところで海上保安庁の巡視船が身を挺して両船の間に割って入り、事なきを得ました。これも「三戦」の一環でしょう。 「小さな島のことで争うのはよくない」と言う人もいますが、中国の本当の狙いは尖閣諸島ではなく、沖縄や九州と接する東シナ海全体だとする見方もあります。地下資源と漁業資源を確保し、アメリカの原子力潜水艦の脅威を遠ざけるために、東シナ海の支配が不可欠と見ているというのです。 (広沢大之助・社会科編集者)