「ホンダの時代が来た」 CEOが語るEVの未来 世界で存在感を示せるか
新しい生産方式に栃木で挑戦
基本的に、0シリーズはEV開発アプローチのリセットを意味するものかもしれないが、これまで培った自動車製造の知識をすべて捨て去るわけではない。 ホンダの電動事業開発本部長である井上勝史氏は、「我々がEVのトップランナーではないことは認識している。しかし、まったく別のものを作るのではなく、自動車における当社の基本的な強みをEV生産にも生かすことができると考えている」と語った。 新時代のEVに向けた土台作りの多くは、栃木県にあるホンダの四輪R&Dセンターで行われており、0シリーズに導入する新しい生産技術やアプローチを磨いている。 ここでのモットーは「薄く、軽く、賢く」である。具体的には、バッテリーを薄くすることで車高を低くしながらも広い室内空間を確保し、軽量化することで「スポーティ」なハンドリングと効率の向上を実現し、ソフトウェアベースのプラットフォームを採用することでコネクテッド技術と半自動運転を実現するというものだ。 ホンダの新しいアプローチを実際に目で見ることができるのが、現在広い作業スペースを占めている6000トンの巨大なメガキャストマシンである。 メガキャストは、1枚のアルミニウム材から大きな部品を一体成型する技術だ。 ホンダは当初、これをバッテリーパックに使用し、必要な部品点数を60点以上からわずか5点に減らすことで、車両重量を低減するとともに、生産にかかる時間と手間も節約する。さらに、大幅なコスト削減も可能になる。 メガキャストマシンは複雑で、ボバ・フェット(映画『スターウォーズ』シリーズに登場する賞金稼ぎ)が賞金首を捕まえて凍結させるために使うような分厚い金型プレス機と、ぐるぐる回転するロボットアームが一体化している。そのため、改良にはかなりの労力を要した。 栃木の開発ユニットが稼動したことで、0シリーズモデルの生産が行われる米オハイオ州の工場に6台のメガキャストを設置する作業がまもなく始まる。