はやぶさ2の状況は? JAXA会見(全文1)想定外の環境にも対処
計画上、エンジニアリングの観点での成果
津田:それでは、7ページから先は津田のほうからご説明させていただきます。小惑星近傍運用の総括ということで、すでに以前、前回の記者説明会で科学的な成果については達成状況、ミッションとしての達成状況についてはご説明させていただきましたが、今日は計画上、あるいはエンジニアリングの観点でどういう成果があったかというところにフォーカスしたいと思います。 7ページに書かれているのは、2018年6月に小惑星に到着してから1年半の間に、当初どういう計画でリュウグウに対して運用しようとしていて、それに対して実績はどうだったかというものを並べたものです。ご存じのように「はやぶさ2」は、通常は光度20キロメートルに滞空してまして、そこから必要なときに降下をして着陸をしたり、ローバーを分離したりということをやります。その降下をするということが、「はやぶさ2」にとっては燃料を食ったり、あるいは、特殊な運用なのでたくさんの人員が必要であると、運用メンバーが必要であると。あるいは事前の計画を綿密にやる必要があるという状態でした。 計画では17回、こういう降下回数を計画、想定しておりました。それに対して実績は18回ということで1回オーバーですけれども、ほぼほぼ、これはリュウグウが想定外の環境だったということにも対処しつつ、事前に計画した範囲内で運用することができたというふうに考えております。特にクリティカル運用、降下運用というのは人がたくさん関わるということと、それから海外の局、NASAの局、あるいはヨーロッパの局、こういういろんな海外の方々の協力も得ないと実現できない、24時間運用なので、そういう運用でした。ですので今日使いたいと言って、あした使えるわけではないんですね。そういう状態で事前に計画しなければいけない。
ローバーは4機とも着陸させることができた
一方で、リュウグウっていうのは到着してみるまで計画が正確には立たないというところがわれわれのジレンマでしたが、幾つかパズルはしています。これをご覧いただければ、計画に対して実績が幾つか前後していたりスケジュールがずれていますが、降下するタイミングとしては、ほぼ計画したところを利用して別の運用にすげ替えたり、あるいは、アボートしたような運用については、あとからもう1回実施したりということをして対応できました。 これをやるに当たってタッチダウン2回目を、これはばつが付いてますが、これはやろうと思っていたのを、そこをやめて、その代わりに直接クレーターを作る運用にいきますということをこの当時、説明させていただきましたが、それはこういう計画の中でやりきるために、そういう決断をしたということになっております。 右のほうに計画と実績の数値として書かれてますが、着陸回数は最大3回と言っていたものに対して、実績はもちろん2回でした。ローバーは4機とも着陸させることができました。クレーターは1個作って、使用ターゲットマーカーは5個使う予定でしたが、これはそれぞれの着陸、ターゲットマーカー1個でできてしまったので、着陸に使ったターゲットマーカーっていうのは1回当たり1個、残り3個あるんですが、その余った3個のうちの2つを小惑星周回させることで新しい科学、計画になかった科学についても実行できましたので、結果として使用ターゲットマーカーは4個、残り1個があるという状態になっています。それから周回物体としてはターゲットマーカー2つと、それからMINERVA-II2というロボット、ローバー。この3機を周回させたということになっております。 8ページにまいります。科学的な成果は今、どんどん出つつあって、リュウグウに関する分析、解析、続々と論文化されようとしている状態ですが、工学的にも想定、当初思い描いていた範囲を超えて成果が挙げられたというふうに考えております。ここではそれを7つにまとめました。