「旧姓では不利益」女性役員の声、経団連動かす 政治に別姓導入迫る
経団連が選択的夫婦別姓の導入を提言した。長年の懸案にもかかわらず動きが鈍い政府に、対応を迫った形だ。財界の総本山を動かしたのは、当事者である女性役員らの声だった。 【写真】元最高裁判事の桜井龍子さんが、選択的夫婦別姓について経団連で講演した=2024年5月29日、東京・大手町、経団連提供 経団連は10日、提言とあわせて、会員企業の女性役員を対象に5月に実施したアンケートの結果を公表した。回答した139人のうち約9割が、旧姓を通称(ビジネスネーム)として使えても「何かしら不便さ・不都合、不利益が生じると思う」とした。 実際に旧姓を通称として使うと答えた約3割の人に、具体的に困った経験を選択肢から選んでもらったところ、「海外渡航時にホテルが通称で予約されていたため、パスポートの姓名と異なるとしてトラブルになった」、「通称で銀行口座やクレジットカードを作ることができなかった」がそれぞれ26人で最も多かった。通称で契約や不動産登記ができなかったという人も多かった。自由記述欄は、姓をめぐる経験や意見について、家族の事情にも触れた書き込みなどであふれた。 ■十倉会長「ビジネスリスクになっている」 社員の旧姓使用を認めている企業からは、給与や税金の手続きなどで戸籍姓との照合作業が煩雑になっているなど、事務負担の大きさを指摘する声も寄せられた。十倉雅和会長も会見で「女性活躍が進み、女性役職員も着実に増加する中、このような姓の問題は当事者個人の問題として片づけることのできない、企業にとってビジネス上のリスクとなっている」と述べた。
朝日新聞社