中小企業オーナーは最強のおいしい職業なのか? 自由が利く、支出は会社の経費といわれるけど
下野竜也さん(仮名)は、父親が創業した食品小売店を約20年前から経営しています。最盛期には4店舗を展開していましたが、大手チェーン店との競合などから業績は下り坂で、不採算店舗を順次店じまいした結果、現在は1店舗を残すのみです。 その1店舗も赤字基調で、仕入先や銀行への支払日のたびに資金繰りに奔走する自転車操業です。パートに払う人件費がもったいないので、下野さん夫婦が週6日早朝から深夜まで働いていますが、改善の見込みはありません。
下野さん夫妻の収入は年々減っており、最近は実質ただ働きという月もあります。貯金を取り崩して生活費に充てることが増えてきて、数年前から奥様と「倒産する前に廃業しようか」と話し合っています。 ただ、会社は債務超過(資産<負債)で、銀行借入金の残高が店舗の土地など資産の価値を上回っているので、資産を処分して廃業すると借入金だけが残ります。廃業したくてもできないという、八方ふさがりの状態です。 現在の仕事や生活に対する満足度を下野さんに尋ねたところ、過去を悔やんでいました。「父から後を継ぐかどうか聞かれたとき、当時勤めていた会社の仕事で少し悩んでいたこともあって、割とすんなり引き受けました。会社員より中小企業経営者のほうが楽だと考えたのは、まったく愚かでした」。
■フツウの社長は年収も普通? 持田さんのような①ウハウハ社長を見ると、中小企業経営者は「世界最強の職業」です。逆に、下野さんのような③ダメダメ社長を見ると、「この世で最も悲惨な職業」と言えそうです。 では、②フツウの社長も含めた3タイプの割合は、どうなっているのでしょうか。正確なところはもちろんわかりませんが、私の感触では、①:②:③=1弱:6:3というところです。 ちなみに、全国の法人に占める赤字法人の割合は64.8%で(国税庁「統計法人税表」)、3分の2が赤字です。②には、実際は黒字経営であるものの節税のために赤字にしているという企業が多数含まれています。