【中国No.1インフルエンサー 『劇場版 再会長江』竹内亮監督インタビュー】「激動の10年で最も驚いたのは、結婚観の変化だね!」
変化を良しとする僕の感性が本作に現れている
例えばこれまで中国の変化といったものに対しては、ジャ・ジャンクーの『長江哀歌』をはじめとして三峡ダムまわりの変化を観て来たので、どこか寂しさや悲しみ、やるせなさやノスタルジーを強く覚えることが多かったんです。でも本作は、変わりゆく風景に対して悲しみや寂しさとは少し違う手触りを覚えました。雄大な景色も変わりゆくことを、中国の人たちは実際のところどう感じているのでしょう。 「多分、僕は変化を前向きに捉えてるので、そういう意味でも中国の観客にとって、「再会長江」に新しい視点を感じたんだと思うんですよ。確かにジャ・ジャンクー監督の視点ってノスタルジー寄りに行くことが多く、それは割に中国ではよくある視点なんですね。でも僕は、変化は良いことだと思ってるし、そこに僕の作品らしさがありありと出ていると思うんです。映画って、やっぱり監督によって全く変わるものだと思いました。だからこそ、この作品が中国でウケたんだと思います。今まで見たことない視点というのは、そういうところなのかな、と」
「僕がなぜ変化を面白いと思うのかは、世代に大きく関係していると思います。僕は就職氷河期世代で今45歳ですが、社会に出る時に最も就職率が低い時代だったんです。バブル崩壊後を生きてきた、発展というものを見られなかった世代。だから先輩たちから“バブル時代はな”という話を聞くたびにイライラしていたんです(笑)。バブル自慢を聞かされてムカついてきた世代の僕が、中国に行ったらリアルにバブルを体験できたわけです。だから“あぁ、発展するって面白いな”と実感しました。いいところも悪いこともあるけど、僕はそれを前向きに捉えているんです。だから僕の視点で中国を見ると、発展や変化が素晴らしいことにしか見えない。ジャ・ジャンクー監督の、発展や変化=悲しいものとは僕は見られないんです」 「それに中国人が長江を題材に描くときって、必ず歴史から入るんです。何万年の歴史を持つ川であり、人類の発展を見続けてきた川なので、当然と言えば当然ですが。でも僕は、本作でも一切歴史に触れていない。たった10年の変化を捉えただけというのが、逆に新しかったんだと思います。今まで見てきた長江のドキュメンタリーとは全然違うぞ、と。もしまた撮るとしたら、さすがにもう少し長いスパンで捉えて、風呂敷を広げてもいいかな、とは思いますが」