「乗らないから関係ない」じゃ済まされない! 路線バス崩壊危機、ドライバーの「給与」を今すぐ上げるべきこれだけの理由
賃金が上がらない根本理由
路線バスの場合、事業者が運賃を値上げする際には、公式のインターネットサイトやバス停の掲示に「国土交通省への申請を行った」と記載されている。 一般的な商品のように、需要が大きい路線では運賃を安くし、需要が少ない路線では運賃を高く設定することは難しい。多くの人が乗るからといって、路線によって値上げして総収益を増やす戦略も取りづらい。 路線バス業界には 「上方硬直性」 という特性があり、需給の一致のための価格調整が働きにくい。 そのため、ドライバーの給与を簡単に上げることができないのだ。また、経営層が将来の賃下げを懸念してあえて賃上げを控えている現状もある。
一般人へのデメリット
冒頭で観光都市であり生活都市でもある京都の事例を挙げたが、路線バスドライバー不足は減便に直結する。路線バスの減便や廃止が進むと、通勤や通学、日常の移動手段が制限されることになる。 例えば、長野市内で路線バスを運行している長電バスは、 「日曜日運休」 を発表し、大きな話題となった。休日に働く人もいるため、免許を持たない学生はクラブ活動や通塾ができなくなることから、心配の声が上がった。 現在では運行再開が進んでいるが、休日の運休は地域経済にも悪影響を及ぼす。路線バスがないことで、休日に人々が街に出なくなり、にぎわいが失われる。地域の観光や商業も影響を受け、住民の生活も不便になる。これにより地域の活力が低下し、最終的には都市や地域の衰退につながる。さらに、路線バスの減少は 「自家用車の利用増加」 を招き、地域の道路の混雑や環境への負担が増す。路線バスの衰退は、 「街の衰退を加速させる」 ため、何とか食い止める必要があるのだ。
待遇改善がもたらす未来
このような社会的状況を考えると、ドライバーの待遇を改善し、その数を増やすことが街の衰退を食い止める鍵となる。路線バスの安定的で安全な運行や地域交通の維持には、待遇の改善が欠かせない。そのためには 「運賃の見直し」 もひとつの手段である。例えば、現在東京都内の路線バスの均一運賃は230円から240円だが、一時的に雇用の安定を図るために 「250円から300円」 にする案が社会で議論されることもある。これは特定目的運賃の考え方である。安価な運賃は一時的にはメリットがあるかもしれないが、長期的には不便や社会的コストを招く恐れがある。 もしドライバーの給与を上げにくいのであれば、社会全体でドライバーの税金を大幅に減少させ、その負担を許容するアイデアも考えられる。また、税金を使って給与を上乗せする案もある。 こうしたさまざまな方法を社会全体で議論し、ドライバーの労働環境を改善することが急務である。もちろん、賃金を上げるだけでなく、よりよいキャリアパスの提供も重要である。 例えば、事務職への転換可能性を示し、将来的なやる気を促すことが求められる。筆者が知るバス事業者には、元ドライバーで現在は運行課長を務めている人がいる。彼は運転現場を知っているため、運行課長としての力を発揮している。若者の就職意欲を高めることも必要だ。