大谷翔平はなぜワールドシリーズで活躍できなかったのか…ハワイで現地英語TV中継を見ながら考えた(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】 先月20日から月初めまでハワイに行ってきた。 【画像】真美子夫人、肩がポロリでSEXYすぎっ!!!❤ カメラが激写したお慌ての瞬間! 安い宿を借りて自炊。朝は海辺をひたすら歩き、午後は浜辺のビーチチェアに寝そべって、プレスリーの「ブルー・ハワイ」を聴きながら、何とも心地よい風に吹かれているだけ。 サンセットを眺めるときはプラターズの「トワイライト・タイム」。古いやつだとお思いでしょうが、「トリスを飲んでハワイへ行こう!」世代は、“カネをかけない、何もしない”ことがハワイの楽しみ方なのだ。 だが、そんな楽しみが奪われる事態が出来(しゅったい)していた。予想をはるかに上回る超物価高である。着いた日の午後、浜前の食堂に入りマイタイ2杯とハンバーガーを頼んだ。勘定書きはタックスとチップが加算され、1ドル=153円換算で約1万2000円なり。日本の国力の低下をこの時ほど恨んだことはなかった。円安を放置し続けてきた自民党が惨敗したときは、砂浜で万歳を叫んだ。 今回は、いつもの午後の過ごし方が変わった。ハワイ時間の午後からドジャースとヤンキースのワールドシリーズ(WS)が始まったからである。アメリカでも大騒ぎかと思ったが、100チャンネル以上ある宿のテレビで生中継していたのはFOXだけであった。英語が全くわからない私にも、このシリーズ最大の注目選手が大谷翔平とアーロン・ジャッジだということはわかった。 シーズン中の2人の活躍シーンが何度も映し出され、2人のインタビューも流された。 英語ばかりの中で大谷の日本語にホッとしたが、アメリカ人は“違和感”を覚えたのではないか。チームメートや塁上で他チームの選手とは英語で話しているのだから、片言でも英語で答えるべきではないか。地区シリーズ前のインタビューで、記者から「緊張しているか」と聞かれ、「NO」と答えたことが日本では話題になったが、この国に7年もいてそれだけ? 近くのギフトショップで、ドでかいソーセージを挟み込んだホットドッグ(約1200円)とコーラを買い込み、第1戦からドジャース優勝までを見続けた。WS最高のシーンは、第1戦、延長十回裏にフリーマンが打った逆転満塁サヨナラ本塁打だった。フリーマンは足首を捻挫していたが、シリーズ後、肋骨も骨折していたことを明かした。彼の不屈の精神とベッツの闘志あふれるプレーがドジャースを鼓舞し、監督の下手な采配にもかかわらず、チームを優勝に導いたのは間違いない。 日本では連日「オオタニサン万歳」がスポーツ紙の1面を飾ったようだが、シリーズ通算打率は1割5厘で本塁打ゼロ。ジャッジも18打数で7三振、本塁打1本のみ。おまけに最終戦で平凡なフライを落球して、ドジャースの逆転劇をお膳立てしてしまった。 大谷が二塁へ盗塁した際、左肩を痛めたのに強行出場したことが「美談」のように報じられたようだが、その前から大谷には気迫が感じられず、どこかうつろな表情が、私には気になっていた。大谷にとって最大の夢であった9月をヒリヒリする思いで過ごし、WSにまで出場できたことで、「燃え尽き症候群」になってしまったのではないのかと。 帰国して驚いたのは、優勝が決定した翌日の紙面だった。「世界一大谷『最高の1年』」(スポニチ11月1日付)。たしかに大谷にとって最高の1年になったが、WSではただの1番を打つ人でしかなかった。肩のケガもフリーマンに比べれば……。 大谷もスーパーマンではないことが証明されたWSであった。野球そのものの面白さを伝えず、無批判に大谷を持ち上げるだけの日本のメディアは、結果的に、野球というスポーツを貶めていることに気付くべきである。 (文中敬称略) (元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)