ディズニー最新作 「プレーンズ」プロデューサー、トレイシー・バルサザール=フリン氏に聞く
農場で働く農薬散布機・ダスティ。その夢は「世界一周レース」でチャンピオンになること。しかし、レース専用機ではなく、おまけに高所恐怖症の彼に対して、周囲の反応は当初冷やかだった。しかし、仲間に支えられ、レースを重ねるごとにライバルたちとの友情が育くまれていく。そして、世界一周レースの行方は――。
「カーズ」の世界観をそのままに、舞台を大空へと移した「プレーンズ」。夢と希望があふれるエンターテインメント作品のプロデューサーを担当したのがトレイシー・バルサザール=フリン氏。これまでに数々のアニメーション制作に携わってきた同氏は単独インタビューに答え、「プレーンズ」の魅力について話してくれた。
――この作品には、過去の名作映画の要素が多く含まれている気がするが、どういった作品を参考にしていますか? 「トップガンや宮崎駿さんの作品における飛行シーンは参考にしています。映画だけでなく、飛行シーンであれば、すべてのものを参考にしました。CMだったりネット上の映像だったり。製作総指揮のジョン・ラセターの哲学があって、『リアル感を描くこと』が彼の作品づくりにおける哲学です。それを実現するために、実際のパイロットにも20人~30人に話を聞きました」 ――パイロットたちにも事前に作品を観てもらったと聞きました。彼らの評価はどうでしたか? 「作品を作る前にもリサーチして、作ってからも専門家にチェックしてもらいました。プロの厳しい目でチェックされたと思いますが、作品について非常に喜んでもらえました。みなさん笑顔でした。実は、Oshkosh(オシュコシュ)という航空関連のイベントがアメリカであり、そこに航空関係者、航空ファンを15,000人集めて上映も行いました。このときも、上映後、全員から拍手喝さいを受けました。専門家に“お墨付き”をもらえたので、本当にうれしかったです」
――飛行機たちが世界の景勝地をまわっていて、その風景描写も見どころの1つだと思います。今回登場した景勝地(レース会場)は、どういう基準で選定されたのでしょうか? 「これも、リアリティの話に戻るのですが、主人公のダスティは農薬散布用に作られた飛行機です。燃料を積めるにも限界があります。専門家に確認してもらい、農薬散布機の能力で飛べる範囲を調べた結果、今回のレース地になりました」 ――日本がレース地から外れてしまったのはそのせい? 「そのとおりです。専門家のせいで、日本が選ばれませんでした(笑い)」 ――インドのタージ・マハルの描写は非常に美しく、ダスティとインド代表のイシャーニが並んでタージ・マハルを回遊している姿は、非常に印象的でした。 「あのシーンは魔法のような瞬間。私にとってもお気に入りのシーンです。とてもロマンチックで“飛行”しているとは思えないような、普通のデートで散歩しているかのように描いています。『わんわん物語』のレディとトランプのデートシーンのようなイメージですね」 ――リアリティを表現している一方で、ニューヨークでは、コミカルな自由の女神が登場しています。 「あれは、『自由の女神』ではなく、『ピティの女神』ですね。フォークリフトを小さくしたような飛行機整備用のマシンをピティと呼ぶのですが、私たちはこの作品の中に登場するものを“プレーン化”する、と言っていて、その世界観を表現しています。例えば、岩肌がプロペラの形だったり、雲が飛行機の形をしていたり。自由の女神がピティの女神になっているのも、その“プレーン化”の1つです」 ――レース会場が日本ではありませんでしたが、日本代表として出場している「サクラ」が作品には欠かせない存在感を示していました。日本女性の奥ゆかしさを描いていましたが、モデルはいたのでしょうか? 「これ、といったモデルがいたわけではないのですが、日本の女性らしいキャラクターにしたいと考え、リサーチしました。ディズニージャパンの協力も得て作り上げました。「サクラ」という名前もディズニージャパンの方と協議して決めました。日本らしさを表現できるよう情報をあつめ、今回のサクラが誕生しました」
子どもから大人まで楽しめるように作られた映画ではあるが、過去の名画の要素が取り入れられている部分や、世界各地の景勝地の描写などは、むしろ大人の方が楽しめる作品になっているのではないだろうか。アイスランドやインド、ネパール、メキシコなど比較的、日本人にとっては馴染みの少ないエリアの表現は、旅番組にも勝るのはないだろうか。 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 2013年12月21日(土)より2D・3D同時公開