「26年ぶりDeNA日本一」の立役者・牧秀悟と職人たちの絆...「大手よりも恩義」《日本シリーズ制覇後の深夜2時半》に取った「牧らしい行動」
「長くつきあっていける選手」
今日25日に封切られた球団公式ドキュメンタリー映像『勝ち切る覚悟』はDeNAの26年ぶり日本一の舞台裏に迫った作品だが、チームの中心にいたのが主将の牧秀悟だ。牧は23年のWBCにも選出され、先月のプレミア12ではチームのまとめ役を任されるなど、侍ジャパンにも欠かせない存在となっている。 そんなNPBを代表する選手の一人である牧だが、用具契約を結んでいるブランドは大手というわけではない。バットは「シュアプレイ」、グラブは「ATOMS(アトムズ)」。より手厚いフォローが望める大手メーカーからの契約話を断り続けて、義理を通す熱い男の素顔、秘話を関係者が語る。 シュアプレイは三共スポーツ株式会社のオリジナルブランドで70年以上の歴史を誇るが、同社はメーカーではなく総合スポーツ用品卸商社。工場を構えているわけではなく、製品は腕利きの職人に委託している。用具提供している選手は複数名いるものの、現在アドバイザリー契約をしているのは牧のみ。牧と契約した決め手について、同社の渡邉英樹氏は次のように振り返る。 「弊社のブランドは規模が大きいわけではなく、牧選手との契約以前にはアドバイザリー選手がいない期間もありました。お金を積んででも有名選手と契約しようという方針でもありません。うちが大切にしているのは、長くつきあっていけるかどうかということ。社長からも『その選手がバットを置くときまで同じ気持ちでサポートできるか。できないならやめなさい』と言われています。 牧選手は初めて会ったときから、この選手ならと思いました。浮かれたところがなく、話をするときも常に姿勢を正している。それは今も変わっていません」 中央大学時代から牧のバットを削っていて、牧とシュアプレイの橋渡し役ともなった「株式会社MRバット」代表取締役の森崎寛樹氏も、その人柄にほれ込んでいる一人だ。
「絶対に活躍します」
「中大OBの知り合いに『バットを作ってあげてくれないか』と紹介されて初めて会うたのは牧君が大学に入学して早い段階のときでした。そこからずっと見てきていますが、ほんま人間的にも素晴らしい選手ですよ。 お世話になった人への感謝を忘れず、義理をきちっと果たす。本当を言えば、彼は僕のバットを使わなくてもいいんですよ。大学3年生のときに型は決まっていたので、よそのブランドでも『この型で作ってくれ』と言ったら同じものが作れる。コンピューター制御で削る機械を、どこも持っていますから。『僕は別のメーカーにお願いします』と言ってもいいんですよ。 でも、彼はプロ入りするドラフトの直前に『モリさん、僕、たぶんドラフトで名前が挙がると思うんです。プロに行っても引き続き、お願いできませんか』と言うてくれてね」 しかし森崎氏が手掛けるMRバットはNPBライセンスがなく、提供することはかなわない状況だった。 「それで『牧、すまん。うちはNPB届けがないから、プロに行ったら使うことができへん。公認されているブランドのOEMでならできるけど、うちと付き合いのあるブランドに限られるで』と説明すると、牧君は『モリさんが削ってくれるんでしょ。それならブランドは気にしませんよ』と迷わず言うてくれました。 彼らしいところですよ。それで三共スポーツさんにお願いしたんです。そうしたらプロで活躍する保証はないのに、『この子は絶対に活躍します』という僕の言葉を真に受けてくれて、『やります』と言っていただけたんです」(同前) シュアプレイは牧とプロ1年目のシーズンが始まる前の春季キャンプ中に契約を結んでいる。これは異例のケースだという。
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