年金制度、いちばん苦しくなるのは「今の若者世代」ではなかった…!【衝撃】
2024年度内に公的年金の改正が行われる可能性が高まってきた。国内では年金制度が将来、維持できなくなるとぼんやりと考えている人が多いが、実はそうではない。政府は高齢者に対する年金減額を急ピッチで進めており、年金財政はむしろ好転している。若い世代の年金不安は解消しつつある一方、今の40代が年金をもらう頃には、年金額は大幅に減っている可能性が高い。政府における最大の課題は、年金が減らされることに伴う老後の貧困問題である。 【写真】原因は日本人にある…?「賃金2倍」で日本に起こる「劇的な変化」
若者の負担を軽減するために
公的年金は5年に1度、財政状況について検証する決まりになっており、今年がその年に当たる。財政検証の結果は夏頃にまとまる予定で、政府は結果を受けて制度改正を実施する流れだ。 日本の公的年金については以前から財政状況の厳しさが指摘されており、いかに財政を立て直すのかが焦点となってきた。多くの国民が「年金制度が将来、破綻するのではないか」といった不安を抱えており、メディアでも関連した報道が多い。 公的年金の財政状況が厳しいのは事実だが、政府は制度改正を通じて、急ピッチで年金給付額の削減を進めている。その結果、財政は好転に向かっており、制度の維持に不安を感じる必要性は薄れつつある。では財政が好転したからといって「100年安心の制度」なのかと言うとそうではない。制度破綻の可能性が低くなった代わりに、今の中高年世代は、十分な額の年金がもらえなくなる可能性が高まっているのだ。 これはどういうことだろうか。 日本の公的年金は賦課方式と呼ばれており、現役世代から徴収する保険料で、高齢者の年金を支払う仕組みとなっている。日本は高齢化が進んでおり、人口に占める高齢者の割合が増えているので、高齢者にこれまでと同水準の年金を給付しようとすると、現役世代がより多くの保険料を負担しなければならない。
マクロ経済スライドの影響で
実際、現役世代の保険料負担は過去30年間で増える一方だった。約30年前、厚生年金に入っているサラリーマンは給料の7%程度を負担するレベルで良かったが、現在のサラリーマンは9%程度の負担を強いられている。 このまま現役世代の負担を増やし続けると、現役世代が疲弊してしまう。政府は保険料の増額は打ち止めにしたものの、現時点でも高齢化は進んでおり、何もしなければ財政が更に悪化してしまう。現役世代からこれ以上、保険料を徴収するのは困難なので、政府が選択したのは高齢者の給付抑制だった。 2004年の年金制度改正では、高齢者の年金を毎年少しずつ減らしていく「マクロ経済スライド」が導入された。この制度はしばらく発動されていなかったが、ここ数年は、連続して発動されており、高齢者の年金は毎年、着実に減っている。 年金の額は増えているが生活が楽にならないと言った類の報道をよく目にするが、これはマクロ経済スライドの影響と考えて良い。 年金支給額は、元来、物価や賃金の動向に合わせて支給額を増やす仕組みになっている。一方で、マクロ経済スライドは毎年一定割合ずつ年金を減らす制度であり、政府は両者を同時並行で走らせている。2024年度については物価が3.2%上昇したので、本来は年金も同じ割合だけ増やさなければならないが、年金減額制度であるマクロ経済スライドの発動によって0.4%、年金額が減らされており、実際には2.7%程度しか増えていない。