年金制度、いちばん苦しくなるのは「今の若者世代」ではなかった…!【衝撃】
30歳以下の若者には「朗報」
物価が3%を超えて上昇し、本来、それに応じて支給額が増えるべきところを抑制しているので、これは明らかな減額である。「年金額は増えているが、物価が上がっているので、実質的に年金が減っている」など、政府に忖度した曖昧な表現の報道が多いが、これは誤りである。政府は明らかに年金額を減らしており、「事実上の減額」ではないという点についてはよく理解しておいた方がよい。 年金減額制度であるマクロ経済スライドの影響は凄まじく、制度の発動を続ければ約20年の間に年金額は(現在の価値を基準にして)2割程度、減る可能性が高い。40代で400万円程度の年収を得ている平均的なサラリーマン(厚生年金)は、現在、月15万円程度の年金を受け取れているが、物価水準が同じだったと仮定した場合、マクロ経済スライドの発動によって20年後には年金額は月12万円程度まで減ってしまう(この水準では、持ち家がない限り、年金だけでは生活できない)。 一方で、年金財政が好転していることや、人口が突出して多い「団塊の世代(70代)」および「団塊ジュニア世代(40代)」が亡くなっていく40年後には、人口ピラミッドは正常化している可能性が高く、年金制度は安定化する。 マクロ経済スライドの発動によって年金財政は急速に好転に向かい始めており、年金制度が危機的な状況に陥る可能性は限りなく低くなった。現在30歳以下の若者にとってはかなりの朗報といえるだろう。 一方で急浮上しているのが、高齢者の貧困問題である。年金を今後20年間で、強制的に2割減らすので、当然の結果として、今の中高年世代が年金をもらう頃には、生活がかなり苦しくなる。近々高齢者になる層の貧困問題こそが、政府における目下、最大の課題ということになる。
生活保護受給との関係
先日、閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)では、パート労働者の厚生年金適用範囲拡大などが盛り込まれた。この措置は、より多くの労働者に厚生年金に入ってもらい、最終的にもらえる年金を増やすことを狙ったものである。 確かに、これまで厚生年金に未加入だった労働者が新に厚生年金に加入した場合、保険料を納付しなければならず、一時的には手取り収入が減ってしまう。こうした理由から厚生年金の適用範囲拡大には反対の声も出ているが、多くの国民は、なぜこの措置を政府が進めているのか、本当の理由に気づいていない。 厚生年金に加入すれば、現時点において手取りの収入が減るのは事実だが、老後に受け取れる年金額は増える。体力が落ち、場合によって要介護に陥る可能性も高い老後において、月1万円でも年金額が多いことは、決定的な違いとなる。あまり言いたくはないのだが、厚生年金未加入の状態を続けた場合、多くの人が老後、貧困に陥る可能性が高いというのが現実なのだ。 現時点でも生活保護は高齢者に対する支給が圧倒的に多く、理由の大半は十分な年金をもらえていないことである。インフレが進行していることもあり、5年後あるいは10年度には高齢者の生活保護申請の急増が予想される。一方で、日本では自己責任論が根強く、現時点においても生活保護の拡大には反対の声が大きい。 こうした社会環境においては、今後、生活保護の給付を維持できる保証はまったくない。そうなってくると、政府としては、何としても年金の底上げを行い、生活保護の増加を抑制する必要が出てくる。厚生年金の適用範囲拡大の本当の狙いはここにある。