医師が明かす衝撃の実態「アフターピルを処方した女性の1割強は性被害者」 加害者に父親も…望まない妊娠、リミット72時間なのに日本だけ入手に「壁」
一方で、国も遅ればせながら入手のハードルを下げる動きを進めている。 アフターピルを市販化する議論は2017年に一度見送られたが、その後、女性の権利保護の観点から早期実現を求める声は高まっていった。 そして昨年11月28日、薬局で処方箋なしでの試験販売が始まった。対象は全国145の薬局。購入できるのは16歳以上。ただ、これはあくまで市販化に向けた「調査研究」の段階だ。2回のアンケートに応じるなど、研究への協力に同意した女性にしか販売しない。16歳以上でも、18歳未満の場合は保護者の同伴と同意が必要という制約もある。 全面的な市販化がなかなか実現しないのは、慎重論が根強いためだ。 懸念事項として挙げられるのは(1)安易に販売されることによる悪用や乱用(2)コンドームなしでの性行為が増えて性感染症が拡大すること(3)薬剤師の負担―などだが、これらは、WHOが2022年に発行した「家族計画ハンドブック」で明確に否定されている。その内容をごく簡単にまとめるとこうなる。
「事前に緊急避妊薬を持っていてもリスクの高い性行動を助長することはないし、服用に当たって医療的な指導も必要ない。これまでの研究結果がそう示している」 慎重論としてはほかにも、販売時のプライバシー確保や性被害の潜在化を心配する声もある。これも杞憂だと上村さんは話している。「岡山での取り組みを見てもらえれば、問題ないと分かってもらえるのでは。助けを求めている女性を見捨てることなく守れる環境をつくることが最優先ではないか」 ▽力を尽くす院長の思いとは 上村さんが求めるのは全国の薬局での市販化だけではない。アフターピルの無償化も早期実現が必要だと強調している。 「そうなればもっと多くの人が望まない妊娠を避けられるし、薬局という身近な場所で入手できると分かれば安心できる。性被害に遭った人を支援につなげやすくできるかもしれない」 根底にあるのは、心身ともに負担の重い、人工妊娠中絶の多さだ。厚生労働省が公表している統計によると、2022年度は12万2725件もあった。「アフターピルで中絶を減らせる可能性もある。大きなチャンスだ」