祭りの後のパリは?五輪パラリンピックが終わりフランスに訪れそうな混沌
移民たちは戻れるのか?
五輪パラリンピックを機に、都市の再開発にも着手した。それによって、移民たちが町から排除された。NGO団体の報告書によると、大会までの1年間で、移民ら1万2,000人が、テントなどの仮住まいから強制排除されたという。パリの北東に面したサンドニ県には、選手村が作られた。サンドニ県は工業地帯で、住む人の多くは工場で働く移民だった。選手村の場所は、もともと外国人労働者が住んでいる住宅だった。選手村の建物は、今後6,000人が暮らせる住宅に生まれ変わり、その一部は低所得者用の公団となるが、移民たちがもう一度戻ってくることがかなうのかどうか。フランスの三色旗の色は「自由・平等・博愛」を表している。その精神に沿った歩みに期待したい。
深刻な物価高の行方
五輪に影響されての物価高も深刻な問題である。大会期間中、メトロ(地下鉄)の運賃も値上がりした。また、市内のレストランも五輪の観光客を狙って、軒並み値上げした。ビールも5割近く高くなったと伝えられる。フランスの消費者物価指数の伸び率は、前年に比べて5%前後上昇した。物価がすぐに落ち着くとは思われず、影響は残りそうだ。
政治の混乱に終止符は?
そして、五輪期間中は"一時休戦"状態だった政治である。大会直前の国民議会(下院)総選挙で、マクロン大統領の与党連合、左派連合、そして極右政党、3つの勢力が拮抗した結果となり、政治が不安定な中での五輪開催だった。それがいよいよ動き出す。マクロン大統領によって、新しい首相も選ばれたが、組閣が順調に進むのかどうか。さらに、膨らみ続ける国の借金による財政赤字も深刻だ。国内総生産(GDP)に対する政府の債務も120%近い。政治の課題は山積している。 心配されたテロなど大きなトラブルもなく、競技自体も熱戦が多かった。100年ぶりの大会は成功したと言えるだろう。しかしその陰には多くの問題が先送りされていた。メダルラッシュに沸いた日本にとっても、フランスという国の今後は、大きな関わりを持ってくる。祭りの後のパリ、そしてフランスをしっかりと注視していかなければならない。 【東西南北論説風(521) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
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