「夜露死苦」が自由? 海外の目に映るダサカッコいい日本のヤンキー文化
――隣国フランスでは単行本が品切れになるほどヒットしていると聞きます。ドイツで受け入れられにくいのは、お国柄も影響しているのでしょうか? そうですね。ドイツはカルチャーに対して教養市民層の影響力が強くて非常に保守的です。いまだに漫画やアニメは子供向けという意識があるので、エログロな表現があるとすぐに「下品なもの」という評価を下されてしまい、流通しません。 一方、フランスはヨーロッパの中で一番日本の文化が素直に受け入れられていると感じます。日本と同じ美食文化のためか、すごくオープンマインドですよね。時には芸術的観点からコンテンツの価値を見いだして楽しもうとしています。そういう姿勢は素直に羨ましいなと思います。 ――逆に日本の文化で残念だなと思う部分はありますか? とくに日本はみんな一緒で、みんな平等で教育のチャンスも平等にある。とにかくみんなと同じを目指す空気があります。でも、どう頑張ってもその一緒にはなれない人たちがいると思うんですね。 「どうせ私はそこに行けないんだろうな」という諦めや不満を抱いたまま、自分を100%受け入れてくれるところを求めた先にヤンキーや暴力団に行き着いてしまうことが日本はあると思います。ドイツもそこら辺は全く同じなんじゃないかなと思うんですけどね。 もちろん、マイノリティーの誰しもが不良グループに身を落とすわけではありません。クラスの中でなじめなくて、ファンタジーの世界に避難するために漫画やアニメを求める子供たちも多いです。
「ジャパニーズヤンキー」コンテンツが「ニンジャ」になるためには
――2020年のドイツ国内コミック売り上げで『NARUTO』が1位を記録するなど人気が根強いです。欧米の方は忍者への憧憬が深いように感じるのですが、何が惹きつけるのでしょうか? 忍者って消えたりとか術を使うじゃないですか。そこが東洋の神秘で魅力的なんですよね。フィジカル勝負じゃなくて頭脳を駆使して敵を出し抜くところが「自分もなれるのではないか」という期待を持たせるのだと思います。対照的に、スポ根ものは反応がイマイチですね。 ――日本的な根性論が合わないということですか? スポーツをやりたい生徒は地域スポーツをやるので、そもそも部活がありません。体育会系というか年次によって敬語を使いわけるのは衝撃的でしたね。「えー! 同じ生徒なのに」って。ドイツでは留年がすごく普通なので古い感じの上下関係はないですね。 スポ根って例えば特訓のために同じ動作を1000回繰り返すとかするじゃないですか。筋肉や骨に負担をかけながら。それで、けがをおしてもやり抜くことが偉いという風潮。ドイツ人はドライで論理的なので「いや、それ意味なくね?」みたいな感想で話が終わってしまいます(笑)。 ――「ヤンキー」は「ニンジャ」のような人気ジャンルに発展できそうでしょうか? 「そうです」と言いたいところですが難しそうですね(笑)。でもドイツの移民や移民的背景を持つ人々にとって、マジョリティーからはみ出した者の心情は刺さります。漫画やアニメに対する意識も若者の間では変わってきているので、受け皿が広がればヤンキーブームも起こりうると思います。 日本のヤンキー漫画もいろいろな切り口の作品が出てくるので、今後どのような描かれ方をしていくのか楽しみにしています。